2020 Fiscal Year Annual Research Report
Multi-Cellular Tissues as a Platform for Aquatic Functional Materials
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
20H05199
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
今井 正幸 東北大学, 理学研究科, 教授 (60251485)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多細胞型膜組織 / マイクロ流路デバイス / 形態制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベシクルから多細胞型組織構造を構築するための基本原理を次の2つのステップで進めてきた。 1)2次元多細胞型膜組織構造を構築するための技術開発:モデル多細胞組織を形成するには、初期状態として大きさの揃ったベシクルを少なくとも10~20個用意し、それらを平面状に整列させる必要がある。ベシクルを作る膜分子としては、温度で膜面積を変化させることができるように熱膨張係数の大きい飽和リン脂質(1,2-dimyristoyl-snglycero-3-phosphocholine: DMPC) を用いた。静置水和法により作製したベシクルはサイズ分布が不均一であるため、このベシクル分散液からサイズ選別する決定論的横置置換法を利用したマイクロ流路を用いて一定のサイズを持つベシクルだけを抽出し、2次元的に集積するデバイスの作製を行った。その結果、40個以上の大きさの揃ったベシクルを2次元状に成功した。 2)2次元多細胞型膜組織の構造の制御:上記デバイスで作製したベシクルをベースにした2次元組織構造を制御させるには、接着力・表面張力・換算体積を変化させることが有効である。まずは、Surface Evolver をベースに我々が開発した2次元組織構造を計算するソフトウエアを開発した。これにより約40個の集積したベシクル一つ一つに接着力・表面張力・換算体積を与えて、それによりどのような形状が得られるのかを計算で求めることができるようになった。この計算結果と実験結果を比較検討することにより、2次元多細胞型膜組織の構造の制御する方法を確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である、2次元多細胞型膜組織構造を構築するためのマイクロデバイスの開発は技術的な問題はほぼクリアし、すでに40個以上の同じ大きさのベシクルを2次元状に集積することに成功した。さらに、2次元多細胞型膜組織の構造の制御のためのシミュレーション手法も確立し、様々なパラメーターを変化させた時の構造を計算で求めることができるようになった。現在は、マイクロデバイスを用いた実験とシミュレーション結果の整合性の確認をおこなっている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の結果を踏まえ今年度は次の研究を展開する。 1)2次元多細胞型膜組織の構造変化の制御 我々の開発したデバイスを用いることにより一定のサイズを持つベシクル約40個を2次元的に集積させた多細胞型膜組織を構築することができるようになった。実際の細胞組織では目的に応じて偏平型やカラム型など目的に応じた様々な膜組織構造を形成している。このような多様な膜組織構造をベシクルを用いて再現することにより組織構造制御法を確立する。具体的な制御パラメーターは接着力と換算体積であり、接着力は静電斥力膜間相互作用ポテンシャルを塩添加により制御し、換算体積はリン脂質膜の熱膨張を利用して、温度変化により制御する。これらの外部パラメータを変化させて多細胞型膜組織の構造変化との対応を明らかにする。また、膜弾性エネルギーを最小にする力学モデルを構築し、シミュレーションから多細胞型膜組織の形態形成を再現する。この実験とシミュレーションから膜組織構造形成の物理的背景を明らかにする。 2)機能性分子を埋め込んだ膜組織の機能発現 上述の多細胞型膜組織の膜に機能性膜分子を埋め込むことにより新たな機能を付与することができるか探索する。例えば、リン脂質膜はその疎水性層により親水性の分子は非常に透過しにくい構造となっている。そこにシクロデキストリンのようなナノチャネルを形成する分子を埋め込むことにより、親水性分子もベシクル内に取り込むことができるようになる。そのようなベシクル集団からできた膜組織は透過能を持たない膜組織と大きく異なる機能を持つことが期待される。そこで、シクロデキストリンや本領域研究で開発されているチャネル形成分子を埋め込んだ多細胞型膜組織を構築し、組織内に機能性分子を取り込めるかどうかを検討する。
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