2020 Fiscal Year Annual Research Report
水素結合による分子認識を水圏で実現する機能性超分子ユニットの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
20H05202
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中村 貴志 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90734103)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水素結合 / 分子認識 / 水 / 超分子 / シクロデキストリン / アミド / NMR / ホストゲスト化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アミド基を多数導入したシクロデキストリン誘導体を合成し、その相互作用部位の水和状態および脱水和過程を詳細に理解することで、水分子との競合下においても多点水素結合による分子認識を実現する機能性超分子ユニットを開発することを目的としている。2020年度は、水中でのアニオン認識能をもつホスト分子の創製を目指し、親水性をもつ電子不足な複素環であるピリジン環に着目して、7つのピリジルアミド基をもつβ-シクロデキストリン誘導体と、ピリジル基をメチル化してカチオン性にしたピリジニウムアミドシクロデキストリンの合成を行った。置換位置の異なる種々のピリジル誘導体について検討した所、シクロデキストリンのカルボン酸誘導体と3-ピリジルアミンの縮合反応が効率よく進行することを見出し、3-ピリジルアミド基を7つもつシクロデキストリン誘導体を単離することに成功した。その構造は1H NMR, MALDI-TOF MS測定などにより詳細にキャラクタリゼーションされた。さらに、得られた3-ピリジルアミド誘導体とメチル化剤の反応を種々検討した結果、シクロデキストリン誘導体の7つのピリジル基の大部分をメチル化することができた。得られたピリジニウムアミドシクロデキストリンは水溶性であることが明らかになった。フェニルりん酸イオンを用いたNMR滴定実験を行ったところ、このホスト分子は水溶液中で1:1の当量比でこのアニオンと相互作用することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水素結合は官能基選択性と可逆性をもつことから、特異性と環境応答性を兼ね備えた相互作用として有望であるが、水分子が相互作用部位に競合するため水圏での利用には不適と考えられてきた。2020年度の研究で、水中でのアニオン認識能をもつアミドシクロデキストリン誘導体を合成することに成功した。今後、得られた超分子ユニットの水圏における機能解明と材料への応用展開を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
NMRおよび円偏光二色性測定により、水和状態とアニオン包接状態における分子構造を詳細に調べる。等温滴定熱測定により、ホスト/ゲスト両分子の脱水和過程の熱力学パラメータを決定する。包接現象におけるアミド基/水分子の振動状態をIR測定により調べ、脱水和過程の挙動を解明する。包接過程を分子動力学計算により検討し、水和状態が個々の分子単位で厳密に議論できる本系の特徴を活かし、実験的手法および理論的手法の両面から水分子の関与について解明し、統合的な理解を得る。また、アミドシクロデキストリンを水素結合認識部位として共重合した高分子材料を得る。種々のアニオン性官能基を表面にもつ材料との接着強度を水中において調べ、環分子中のアミド基の数に応じた選択的接着能を実証する。
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