2020 Fiscal Year Annual Research Report
Ice microfluidics utilizing chemical properties of ice surface and its application to analytical chemistry
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
20H05203
|
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
稲川 有徳 宇都宮大学, 工学部, 助教 (30828489)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 氷 / マイクロフルイディクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は(1)氷表面の-OHダングリングボンドが有する配位子交換機能の解明と、(2)凍結水溶液中に存在する凍結濃縮溶液(FCS)の構造制御とそれに向けたプラットフォームの開発を行った。 (1)については2-メチル-8-キノリノール金属錯体と氷表面の配位子交換反応を詳細に検討した。有機溶媒中に金属錯体を溶解し、氷微粒子をその中に添加し攪拌した。その後、上澄み溶液を取り、吸光光度計で遊離した配位子と未反応の錯体を定量的に解析した。すると、鉄(II)とガリウムの錯体については配位子交換反応が見られなかった一方で、インジウム錯体は配位子交換が見られた。これを定量的に解析すると、平衡反応定数はシリカゲルのおよそ100分の1であることがわかった。シラノール効果と比較すると小さい値となるが、配位子交換が起こることがわかった。また、遊離する配位子の数もシリカゲルの場合は1つであったのに対し、氷の場合は2~3であることがわかった。これは、氷/溶液界面の構造があいまいであり、低密度水の存在などが考えられる。本年度は詳細を解明するに至らなかったため、来年度温度や溶媒条件を検討することで、遊離配位子数の違いを明らかにする。 (2)について、申請者はこれまでにFCSを分離場として用いることを試みたが、凍結現象は確率論的であるため、FCSの形状を制御することができなかったため、分取を行うことができなかった。そこで、本年度は空間が制限されるマイクロ流体デバイス中で水溶液を凍結させその構造の観察を試みたところ、空間サイズと壁面の疎水性をコントロールすることで、FCSの成長方向(すなわち氷結晶の成長方向)を制御できることを見出した。来年度はこれを分離プラットフォームとして、微粒子や生体実試料の分離を試みる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は目標の一つである氷表面の配位子交換機能の発見とその熱力学的定数の決定を行ったことは、大きな目標達成である。また、FCSの向きを制御するためにマイクロ流体デバイスを用いたことは堅牢な分離場・分析場としてFCSを用いるためのプラットフォームとして適格であったことがわかった。これは来年度、生体試料の分離分析を行うための大きな指針となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた結果については、早急に原著論文として来年度中に報告する。また、氷表面における配位子交換反応はシリカゲルのような系とは脱離する配位子の数が異なることがわかった。これは、氷/溶液界面の構造がシリカゲルの系とは大きく異なる可能性があるため、詳細に検討するとともに、この氷表面の配位子交換機能を分離モードとした新規分離法の設計に取り掛かる。 また、FCSの構造を制御することができたため、これを用いてまずは粒子のサイズ分離(分取)を試み、その後細胞やベシクルなどを用いた生体実試料を用いた分析を行う。
|