2020 Fiscal Year Annual Research Report
Water-assisted orientational polarization of asymmetric Nickel-complex for next-generation OFET interlayer
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
20H05206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤野 智子 東京大学, 物性研究所, 助教 (70463768)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | d-π共役系分子 / 両親媒性分子 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
双極子モーメントをもつ極性分子は,同一方向に整列した配向分極状態で,有機電界効果トランジスタ(OFET)の電極-有機半導体の界面分極を誘起して電荷伝導を促進しうる中間層材料として注目されている.これまでに,無機化合物やポリマーによる中間層が実現されてきたが,半導体層との接触抵抗や分子量分布に由来した再現性の低さが問題となっていた.本研究では,OFETの高性能化・高安定化を目的とし,一義構造をもつ単一有機分子による中間層の開発を目指す.極性分子を同一方向に整列させる分子設計として,我々の開発してきた金属ジチオレニルカテコール錯体の各極に親水性・疎水性置換基を導入した「両親媒性の極性分子」を開発する.両親媒性分子は水表面で同一方向に配向化する(疎水性側を気相に,親水性を液相に向ける)ことから,これを電極表面に転写することで分極化した単一分子による中間層を構築できる.本手法により一義構造をもつ単一有機分子を中間層材料に用いることで,その高秩序積層による界面分極の高効率化・高安定化が望めるだけでなく,半導体材料との接触抵抗を軽減できる.これらにより,従来のデバイス構成を凌駕する高伝導性・高安定性の獲得が見込まれる.さらに中間層自体の一義構造性に基づいた詳細な構造解析が可能となることから,未だに明らかになっていない中間層による界面分極機構や伝導促進機構を解明でき,新物理現象の発見をも期待することができる.さらに,両親媒性d-π共役系分子においては,水中で中間水が高密度に集積した「中間水クラスター」の形成が期待できる.d-π電子系に対する水素結合の効果は未解明な点が多く,機能化の例も乏しい.中間水クラスターの存在を光学的・構造的特質を明白にするとともに,水-d/π電子の協働物性を探索する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は中間層構築のための両親媒性の極性分子合成法を開発し,その膜化と構造解析を行った.領域会議や領域内共同研究者との議論等を通じて,合成標的としていた非対称錯体から,その前駆体構造より誘導可能な錯体塩へと変更することに着想した.これにより目標達成の迅速化が図れるとともに,有機電子デバイス内で中間層にとどまらず高機能半導体層の活用も可能となった.こうした構造改訂のもとで錯体塩の原料からの合成を行った.各工程における反応条件を精査・最適化することで,高効率・グラムスケールでの供給が可能な錯体塩合成法を確立することができた.錯体塩の構造はイオン塩の検出に優れた質量分析から決定することができた.得られた錯体塩は,領域内での薄膜化を専門とする研究者との共同研究を通じて,半導体層のための薄膜化することができた.水-有機溶媒の界面を活用するLangmuir-Blodgett法を用い,基板転写膜の構成条件を最適化した.この薄膜は酸化することで半導体層へと活用可能となる.酸化条件の精査のなかで,ヨウ素を用いた反応条件では一部薄膜の基板からの剥離が生じたが,極めて温和な空気中条件により,酸化を進行させられることを見出した.得られた薄膜の高輝度X線回折測定から,高秩序に分極配向した薄膜が構成できていることを確認するとともに,その積層様式をはじめとする詳細な構造情報を入手することができた.さらにこの錯体塩のカウンターイオンの変更により,水中で水和結晶を形成できることを確認することができている.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,この錯体塩のOFETデバイス内半導体層としての性能評価を行う.ここでは,基礎的なOFET移動特性(移動度・on/off比・閾値電圧)に加え,大気安定性の時間経過測定などを指標とした性能・特性評価を行う.さらにこの薄膜の中間層としてのデバイス構成法を別途開発し,その移動特性への効果を明らかにする.これらにおいては領域内での薄膜解析を専門とする研究者とともに高輝度微小角X線回折やX線光電子分光測定などによる薄膜の詳細な構造解析を行うことで,構造を基盤とした界面分極誘起の機構の理解を目指す.また,カウンターイオンを変更した錯体塩が水中で水和結晶を構成可能であることから,その結晶化条件の精査と詳細な構造解析を行う.カウンターイオンの種類による水和結晶構造への影響や,その熱的条件下での動的挙動を捉える.新たにベシクル解析を専門とする研究者と共同研究を通じて水和性のカウンターイオンの新規導入によって錯体塩のベシクル化も目指す.d/π共役系塩のベシクルの例はごく限られており,そのd/π電子に基づいた光学・磁性特性を探索する.ここでは透過電子顕微鏡法による水溶液の観察をもとにその構成条件の精査を行う.さらに水和結晶近傍の中間水の存在を確認できれば,その詳細な光学測定・軟X線回折測定によりその特性を見出せると考えている.こうしたd/π共役系近傍の中間水の挙動はほとんど検討例がなく,その特質を見出すとともに,その水-d/π電子の協働物性を探索する.
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Research Products
(10 results)