2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of the method of generation and application of the electrostatic polarization model of hydrogen-bonded systems based on statistical analysis of electron density changes
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
20H05215
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鳥居 肇 静岡大学, 工学部, 教授 (80242098)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水素結合 / 静電分極 / 電子密度 / 統計的解析 / スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
水の溶媒としての特性を的確に表現できる理論モデルを構築することは,水と材料の分子レベル・ナノ集合レベルでの相互作用を捉え,それにより水の存在下において機能を発現する材料を創成しようとするにあたって,重要である。従来の静電分極モデルは,空間的不均一静電環境への応答の表現などにおいて大きな欠陥をもつため,分子間相互作用による電子密度変化を,多様な分子配置を考慮して統計的に解析することによって,水素結合性分子の静電分極モデルの理論的生成法開発を進める。それに加えて,分子分極が深く関わるスペクトルのシミュレーションによって,理論モデルの妥当性を検証するとともに,水素結合形成に与る水分子の分光学的性質の変化を理論的に解析し,領域内で行われている実験的研究との融合により,機能性材料分子との相互作用に関わる水分子の性質の解明を進める。 令和2年度においては,水クラスター内における水分子どうしの静電分極による電子密度変化に対して,統計的に解析をおこない,数種類の基本となる電子密度変化の線形結合によって,電子密度変化全体の大部分を表現できることを見出した。そして,そこに含まれる因子を抽出することにより,的確な静電分極モデルの構築法を提示する準備を整えることができた。また,水クラスター内における水分子のOH伸縮振動の振動数と双極子微分が,当該水素原子上に掛かる電場の関数として良く表現できるものの,純粋な静電相互作用のみを取り入れた結果とは大きく異なることを明らかにし,詳細な電子密度解析の結果から,そこには分子間電荷フラックス(1次微分と2次微分の両方)の効果が大きく関わっていることを,明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに,「分子間相互作用による電子密度変化の,多様な分子配置を考慮した統計的解析による,水素結合性分子の静電分極モデルの理論的生成法開発」「水素結合形成に与る水分子の分光学的性質の変化の理論的解析」の双方について,進展を得ることができた。前者については,水クラスター内における水分子どうしの静電分極による電子密度変化について,数種類の基本となる電子密度変化の線形結合によって,電子密度変化全体の大部分を表現できることを見出したところであり,論文発表に向けて準備中である。後者については,水クラスター内における水分子のOH伸縮振動の振動数と双極子微分に関わる静電相互作用と非静電的メカニズムについて解析した結果を,J. Phys. Chem. B誌に論文として発表したところである。このことから,「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
「分子間相互作用による電子密度変化の,多様な分子配置を考慮した統計的解析による,水素結合性分子の静電分極モデルの理論的生成法開発」については,水に取り囲まれたペプチド,ホルムアミド液体系などに解析対象を広げる。原子数が多く対称性が低い対象系の解析を進めることにより,大規模系への展開が可能な形の理論モデルを探索する。また,「水素結合形成に与る水分子の分光学的性質の変化の理論的解析」については,カルボニル基,エーテル基などに水素結合供与する水分子の振動モードの振動数を決める因子について,理論的解析をおこなうことにより,振動数シフトに関わる静電相互作用モデルの適用範囲と一般性の程度を明らかにする。さらに,「分子分極が深く関わるスペクトルのシミュレーションによる,理論モデルの妥当性検証」を進めて,生体分子系,電解質系など,実在系における分極効果への応用展開を図る。
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