2020 Fiscal Year Annual Research Report
Nanoporous Structures and Membranes Utilizing Shape-persistent Macrocycles for Aquatic Functional Materials
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
20H05216
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河野 慎一郎 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (10508584)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大環状化合物 / 液晶 / ナノ空間 / 分離膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,サイズと形状が均一な大環状化合物からなるカラムナー液晶や分子チューブ構造の内側に構築したナノチャネル構造を利用して,環境汚染の原因となる有機塩素化系分子の特異的吸着や,水の浄化を目的とした特異的物質輸送するイオン分離膜の評価を行うことを目的とする。以下に、本研究計画上のこれまでに得られた研究成果を示す。 1. カラムナー液晶性大環状化合物の環状構造の一部であるサルフェンとリチウムイオンの結合構造の解明とその動的挙動の解析 イオンを伝導するナノ空間を原子・分子レベルで理解するためには、モデル分子を用いた詳細な議論が重要である。モデル化合物として大環状化合物を構成するサルフェンを用いてリチウムイオンとの複合化を行い、単結晶構造を得ることに成功した。この単結晶構造解析により、リチウムイオンを配位したサルフェンが二量化し、酸素原子とリチウムイオンによりキュバン型の構造を形成することを明らかとした(Inorg. Chim. Acta, 512, 2019)。リチウムイオンとサルフェン部位の結合距離やその幾何構造に関する重要な知見を得た。また一方で、リチウムとサルフェン部位の溶液中の動的な挙動を温度可変のNMR測定から測定したところ、キラルな分子配向をもつリチウム-サルフェン錯体の二量体が動的にその鏡像異性体間で相互変換していることや、それらの相互変換速度が溶媒に依存することも明らかとした。 2. 129Xe NMRを用いたカラムナー液晶性大環状化合物のナノ空間解析 129Xeは、その大きく分極した電子構造から多孔性材料のナノ空間解析に用いれている。本研究では、カラムナ-液晶大環状化合物のナノ空間解析のために、129Xe NMRを用いた空間解析を行った。その結果、カラムナー液晶内部に実質的なナノ空間が形成されていることを世界で初めて実証することに成功した(論文投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カラムナー液晶性大環状化合物内部のナノ空間の解析 129Xeは、様々な多孔性材料のナノ空間解析のプローブ原子として利用されており、Xe原子間,またはXeと異核種原子間の相互作用の程度をNMR信号として計測することができる。これにより,129Xeはナノスケールの空間解析に適したプローブとして多孔性物質や分子ケージ内の孤立したナノ空間解析に利用されている。高分子中の細孔解析のための固体NMR分光法について豊富な経験と実験設備を備えた学外の共同研究者との連携により、129Xe NMR解析を利用したカラムナー液晶のナノ空間の構造評価を行った。既に昨年度から129Xe NMR解析について共同研究を進めており,ナノ細孔内部に特異的に包接された129XeのNMRシグナルの観測に成功しており、圧力や温度依存を用いた測定からカラムナー液晶内部のナノ空間の存在を示唆する結果を得た(論文投稿準備中)。 らせん型構造をもつカラムナー液晶の開発とその異方的分子配向 1,3-プロパンジオナト基をもつ液晶性化合物が、らせん構造を形成しながらカラムナー液晶相を発現することを見出した。予想されるらせん構造中の中には、数Aのナノ空間が形成されている可能性が有り、より詳細な分子集積構造中の構造解析が求められる。そこで、本新学術領域研究のA02先端計測・シミュレーション班である高輝度光科学研究センター 池本夕佳 博士との連携により、顕微IRを用いることで、配向処理を施したカラムナー液晶相の詳細な分子構造解析を行った。液晶状態における、化合物のカルボニル基に由来するcm-1の吸収帯に対して、分極プロットを測定することにより、配向処理をした方向に対して平行な方向とそれに対して垂直な方向で明瞭に吸収強度が異なることを見出した。この超分子型らせん構造の内部を利用したイオンや水の輸送能の評価を検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,大環状化合物の自己組織化によって構築するカラムナー液晶や分子チューブ構造の内部のナノチャネル構造を利用して,水分子や有機分子,イオンの特異的な吸着とそれを利用した選択的物質透過能を評価する。また,この超分子組織構造を利用して,水中に極微量存在する有機塩素化化合物の吸着材料の実現に向けて基礎的な知見を得るために,以下の研究目標を達成しながら研究を進める。 ・大環状化合物からなるカラムナー液晶を用いたイオン透過性多孔性物質の構築 申請者らは,大環状化合物を一次元に積み重ねることで,温度によって可逆的に相転移するカラムナー液晶を開発している。この大環状化合物の側鎖に光重合性の官能基を導入した化合物を合成し,カラムナー組織を形成させた後に重合反応により高分子化した多孔性物質を作成し,そのイオン選択的な物質透過能を評価する。 ・大環状化合物の二次元自己組織化により構築する多孔性二次元周期構造の固定化による分離膜の構築 これまでの研究で約1.4 nmの環サイズをもつ大環状化合物が,Au(111)基板上で自己組織化により多孔性二次元周期構造を形成することを見出した。これらを利用して,機能性物質配列のテンプレートや,水/有機界面での選択的物質透過する単分子膜として開発しており、これに関して論文投稿の準備している。 ・内部にらせん状ナノ空間をもつ特異なナノチャネルをもつ分子チューブを用いた水や有機塩素化化合物の特異的吸着および物質輸送性能の評価 申請者らは,大環状金属錯体を用いて分子チューブ構造を構築することに成功した。その中にクロロホルムなどの有機塩素化化合物が選択的に吸着されることを見出している。現在この現象について詳細に解析しており,環境の有害物質である有機塩素化化合物の選択的除去や,特異的吸着のための機能性材料につなげるための評価を行っている。
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