2020 Fiscal Year Annual Research Report
チタン/生体組織相互作用における水和相の役割理解と応用
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
20H05225
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松本 卓也 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (40324793)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チタン / 生体界面 / 接着 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
チタン以外の無機材料、金属材料を生体軟組織用接着材として利用し、その接着力を計測することで接着メカニズムの理解に繋がる、という考えのもと、他種類の材料での接着力評価を進めた。具体的にはTi-6Al-4Vという整形外科領域でも使用されるチタン合金、また、オクタカルシウムと呼ばれるリン酸カルシウムの1種、さらには竹の葉の裏側を元に検討を進めた。検討の結果、これらの生体軟組織への接着性を確認し、接着メカニズムの1つとして、適切な界面水分量という考えを導くとともに生体軟組織の有する物質特性についての検討の必要性を理解した。また、生体軟組織とチタンとの接着を理解するうえで、新しい評価方法の確立も有効である。そこで、一つの新たな評価方法として生体分子溶液とチタンとの接触の瞬間を超高速カメラで撮影し溶液が拡散する過程を定量化する、という方法の確立に着手した。この検討において、生体分子溶液が材料に接触した瞬間から数百μ秒の超短時間における溶液拡散速度を計測した。この結果、含有する生体分子により、また、接触する材料によって溶液拡散速度に顕著な違いがあることを明確にできた。さらに、骨組織の構造から無機成分と有機成分との協調的な複合化について理解を深めるため、魚類肋骨を参考に詳細な構造解析を進めた。この検討の結果、魚類肋骨における特徴的な層状構造を確認し、その生成過程における細胞、基質の配向についても確認した。これら研究の結果、論文発表3件、学会発表3件、特許出願1件を行うに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記、概要にも挙げているとおり、純チタン以外の材料を中心に生体軟組織との接着力の計測を進めた。使用した材料は金属材料としてTi-6Al-4V、無機材料として第8リン酸カルシウム(OCP)、さらに有機材料としての竹葉などである。いずれも高い疎水性もしくは高い吸水性を示す材料であり、生体軟組織との接着界面に存在する水分量はとても少ない状況となる。いずれの材料も酸処理チタンほどではないが、40 kPa程度の高い接着力を示した。また、新たな接着界面評価方法として超高速カメラを用いた実験系を構築した。これは、生体分子溶液が材料に接触した瞬間の溶液拡散速度を定量化することで、生体分子と材料との親和性を評価できる、という新しい手法である。これら検討を通して、生体軟組織そのものの物性が材料との接着に重要である可能性がわかってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の検討を通じ、生体軟組織そのものの物性が材料との接着に重要である可能性がわかってきた。そこで、本年度は生体軟組織、特に皮膚、粘膜組織、実質臓器やこれらを構成する分子が含む水分、ならびにその水和相について検討を進める。また、この水和相が材料界面においてどのような相互作用に関与するかについての検討も進める。さらに、これら生体構成分子を介したチタン材料やリン酸カルシウムなどの無機材料接着を試み、これら生体構成分子とバイオマテリアルとの接着親和性について定量化を進める。これら検討を進めた上で、さらなる表面修飾による接着強度の増強や、これら接着材を用いた新たな医療装置や手技の開発を目指す。
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