2020 Fiscal Year Annual Research Report
Design of Smart Aquatic Functional Materials with Dynamic Molecular Binding Ability by Depression of Entropy
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
20H05236
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
宮田 隆志 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50239414)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / エントロピー / 刺激応答性 / 分子インプリント / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,エントロピー抑制により,外部刺激に応答して分子結合能を制御できるスマート水圏機能材料の設計を目指している。本年度の研究実績を以下にまとめる。 (i) エントロピー制御によるスマート水圏機能材料の設計:重合性官能基を導入したシクロデキストリン(CD)と鋳型分子(モデル薬物)との2:1複合体とN-イソプロピルアクリルアミド,少量の架橋モノマーを共重合して網目形成した後,鋳型分子の除去により,温度応答性のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)を主鎖とする分子インプリントゲルを調製した。その結果,分子インプリント法により,コイル-グロビュール転移する温度応答性ゲル内に動的分子結合サイトを形成することに成功した。また,リガンドとしてCDを導入したポリペプチドと鋳型分子との複合体を形成させた状態で,ポリペプチド鎖を架橋して網目形成した後,鋳型分子を除去することにより,ポリペプチド鎖を主鎖とする分子インプリントゲルも調製した。このような分子インプリント法により,ヘリックス-コイル転移するpH応答性ポリペプチドゲル内に動的分子結合サイトを形成することに成功した。 (ii) スマート水圏機能材料の動的分子結合能の検討:温度上昇に伴って分子インプリントPNIPAAmゲルの膨潤率も減少することがわかった。さらに,様々な温度で分子インプリントPNIPAAmゲルに対する標的分子の吸着量を測定し,温度とゲルへの吸着量との関係を明らかにした。同様に分子インプリントポリペプチドゲルの膨潤挙動のpH依存性を調べ,円二色性分散計によってα-ヘリックスやランダムコイルなどのコンフォメーションを評価した。さらに,様々なpHで分子インプリントポリペプチドゲルに対する標的分子の吸着量を測定し,pHとゲルへの吸着量との関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,温度応答性高分子鎖とpH応答性ポリペプチド鎖からなるゲル内に,分子インプリント法により動的分子結合サイトを形成する予定である。本年度の研究は新型コロナウイルス感染症によって少し影響されたが,予定していた研究項目はある程度遂行することができた。特に分子インプリント法により温度応答性高分子ゲルおよびpH応答性ポリペプチドゲルの合成に成功しているので,「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
外部刺激に応答して分子結合能を制御できるスマート水圏機能材料を設計するため,今後の研究の推進方策を以下にまとめる。 (i) エントロピー制御によるスマート水圏機能材料の設計:引き続き,リガンドとしてシクロデキストリン(CD)を用いた分子インプリント法により,主鎖として温度応答性のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)やpH応答性のポリペプチド鎖からなる分子インプリントゲルを調製する。その際,温度応答性高分子鎖やポリペプチド鎖のコンフォメーションが異なる条件でゲル化させ,高分子鎖の自由度が異なり,様々なエントロピー状態の分子インプリントゲルを設計する予定である。 (ii) スマート水圏機能材料の動的分子結合能の検討:温度やpHを変化させたときの分子インプリントゲルの膨潤率を測定し,各刺激による高分子鎖のコンフォメーション変化を評価する。さらに,様々な温度やpHで分子インプリントゲルに対する標的分子の吸着量を測定し,コンフォメーション変化により分子結合サイトの標的分子結合能の制御を試みる予定である。 (iii)スマート水圏機能材料の動的分子結合能を利用した薬物放出制御:温度やpHに応答する分子インプリントゲルにモデル薬物を結合させ,薬物を内包させた分子インプリントゲルを調製する。さらに,温度やpHに応答したコンフォメーション変化により分子インプリントゲルからのモデル薬物の放出挙動を調べ,結合支配型ドラッグデリバリーシステムとしての可能性を検討する予定である。
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