2020 Fiscal Year Annual Research Report
水圏環境下でイオン・分子認識機能を発現するグラフェン機能材料の開拓
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
20H05238
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
上野 祐子 中央大学, 理工学部, 教授 (30589627)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グラフェン / 分子認識 / センシング |
Outline of Annual Research Achievements |
固体表面上、特に疎水的材料(グラフェン)表面に形成される「界面水」に着目している。親水性な種々の機能分子の修飾により、疎水的なグラフェン表面の親水性が増加することが分かってきており、界面層で発現する分子認識機能と、関与する分子の水和構造への影響を調べることを目的とする。 今期は、「課題(ii)界面層への機能分子の導入」として、グラフェン表面に、ホストゲスト機能を有するβシクロデキストリンのピレン誘導体(A03-2 高島らにより合成)の修飾を行い、グラフェン電極デバイス(βCD-GE)の作製法を確立した。βCD-GEの電気化学特性を無修飾のグラフェン電極と比較し評価した。その結果、包接したときβ-CDからはみ出す(Ferrocenylmethyl)trimethylammonium Bromide (FcTAB) の場合、酸化還元応答電流が増加した。表面近傍に保有されることにより、酸化還元する分子の量が増加したと考えられる。これに対し、はみ出しが少ないDopamine hydrochloric acidおよびp-aminophenolは、酸化還元応答電流が大幅に低下した。これらの小さい分子は、CD包接時に電極表面から立体的に隔離され、電極表面近傍に保有されていても酸化還元への寄与が低減するためと考えられる。さらに陽イオン交換膜を表面修飾したグラフェン電極デバイス(CER-GE)の作製を行い、Fe錯体の識別を行った。陽イオン錯体である(FcTAB) は、膜搭載により感度が数倍向上したのに対し、陰イオン錯体である[Fe(CN)6]3-/4-に対する感度はほぼ0であった。これらの機能化したグラフェン電極を用いて、現在、水への溶解性が異なる数種類の分子の酸化還元特性を測定している。これらの結果から分子認識機能と水和の関連を調べ、課題(iii)の解決を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
応募時から所属機関の異動があったこと、コロナ感染防止のため在宅勤務期間が長期にわたり、研究環境の整備および実験に遅れが生じた。 研究課題のアイディアや方針、予期しない実験結果が生じたことが遅れの理由ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の技術課題の解決にあたり,(i)支持膜と基板の間を密な材料で満たすことなく,界面層の厚さを5 nm程度まで拡大することを可能とする支持膜担持方法の実現(A03-1田中らと共同で実施中),(ii)以上の方法で形成されたな界面層への機能分子の導入(A01-1加藤ら、A03-2 高島らと共同で実施中),(iii)界面層における機能分子の動作評価の3点が不可欠と考えた.研究計画として以下の3つのステップを遂行する.2021年度は,課題(i)については成果化をはかる。課題(ii)では、グラフェン表面に、DNAと別の認識機能分子としてA03-2 高島らが合成したシクロデキストリンの修飾に成功したので、課題(iii)に進み、分子認識機能の動作を評価する.得られた成果はそれぞれ論文や学会発表を通じて報告する。
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