2020 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of supernova neutrino spectrum considering collective neutrino oscillation
Publicly Offered Research
Project Area | Unraveling the History of the Universe and Matter Evolution with Underground Physics |
Project/Area Number |
20H05240
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加藤 ちなみ 東北大学, 工学研究科, 助教 (40850946)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超新星爆発 / 超新星ニュートリノ / ニュートリノ集団振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
超新星爆発に付随して放出される超新星ニュートリノの観測からは高温・高密度下における状態方程式や超新星爆発メカニズムに関する重要な情報が多く得られる.そこで,将来起こる超新星爆発に向けた超新星ニュートリノの詳細な理論予想が必要とされている.ニュートリノ集団振動はそのために欠かせない現象であるが,その非線形性と空間・角度スケールの細かさから爆発の数値計算に取り入れることが難しく,集団振動によるニュートリノスペクトルの変化を計算した研究はこれまでなされてこなかった.本研究では,モンテカルロ法と呼ばれる従来とは異なる手段を用いてこの課題に挑む. 今年度は主に(a)モンテカルロ輸送計算におけるニュートリノ振動の数値計算手法の確立および(b)一様バックグラウンドにおける集団振動がニュートリノスペクトルへ与える影響と物質効果の調査を行った.具体的には,これまでに開発を行っていた古典的なニュートリノのモンテカルロ輸送計算コードにニュートリノ振動(真空振動・MSW効果・集団振動)の支配方程式であるquantum kinematic equation(QKE)を解くルーチンを加えた.そして,真空振動やMSW効果に対して新しいコードで得られた数値解を解析解と比較し,簡易的なニュートリノ角度分布を初期条件とした集団振動に関するテスト計算を行った.これらのテスト計算によって本コードが非常に良い精度でニュートリノ振動を扱うことができていることが分かった。 続いて,ニュートリノ振動のみならずニュートリノと物質の散乱過程をコードに取り入れた.この際に古典的なモンテカルロ輸送計算では用いられていない粒子を分割する方法を新しく考案し,ニュートリノ振動と散乱の両者を正確に扱えるコードを開発した.この散乱が集団振動のふるまいに与える影響の調査は来年度も継続して行っていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画として当初予定していたのは,(a)モンテカルロ輸送計算におけるニュートリノ振動の数値計算手法の確立および(b)一様バックグラウンドにおける集団振動がニュートリノスペクトルへ与える影響と物質効果の調査の2つの課題であった.そして,今年度はこれら2つの課題を予定通りにしっかりと遂行でき,順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は(b)一様バックグラウンドにおける集団振動がニュートリノスペクトルへ与える影響と物質効果の調査を引き続き行っていくのに加えて,(c)超新星爆発の数値計算における集団振動の取り扱い方法の考案および(d)集団振動を考慮した超新星ニュートリノのスペクトル及び光度の計算とそれに基づく観測予想の2つ課題に取り組む.そのために今年度用いた簡易的な初期ニュートリノ分布やバックグラウンドモデルから少しずつ現実的な超新星爆発の状況へと近づけていく必要がある。これらの拡張を行うと現状の数値計算コードでは計算時間がかかりすぎてしまうことが予想されるため,まずはコードのMPI並列化などを行い高速化する必要がある. その後,ニュートリノ集団振動の空間的な漸近挙動の有無を調べ爆発の数値計算への実装可能性を探る.これにより集団振動の漸近挙動を発見できた場合は,実際の爆発計算に集団振動を組み込む方法の考案およびその実装を行い,完成したコードを用いて超新星ニュートリノの光度やスペクトルを計算する.この時,主に集団振動が爆発のダイナミクスに与える影響の調査と,従来の超新星ニュートリノの観測予想との比較を行う. 一方で,漸近挙動が発見できなかった場合はより広い領域かつ非一様なバックグラウンドに対するニュートリノのモンテカルロ輸送計算へと計画を変更し,モンテカルロコードのアップデートを行う.爆発計算で得られた様々な時間のスナップショットに対してニュートリノの定常計算を行い,それらをつなぎ合わせることでニュートリノ光度やスペクトルを構築して,検出器における観測予想を行う.
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