2020 Fiscal Year Annual Research Report
大質量星における40Kと中質量元素の元素合成:後期進化の対流混合による影響
Publicly Offered Research
Project Area | Unraveling the History of the Universe and Matter Evolution with Underground Physics |
Project/Area Number |
20H05249
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 敬 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (80374891)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 元素合成 / 大質量星 / 超新星 / 40K / 中質量元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は太陽系金属量を持つ大質量星と超新星について、大質量星の後期進化における対流層境界での物質混合に影響するovershootの効果に対するカリウムを含む中質量元素の生成量の依存性を調べた。ここでは初期質量が太陽の10, 12, 15, 20, 25倍の星について対流境界での拡散混合の指標となるovershoot parameterの値をfov=0, 0.002, 0.005, 0.01, 0.03として重力崩壊に至る進化の計算を行なった。そして、その後の超新星爆発における爆発的元素合成の計算まで行なった。その結果、大きなovershoot parameterの場合には、酸素/ネオン層におけるネオン燃焼と酸素燃焼がより進行し中質量元素の酸素/ネオン層への混合が起きやすくなり、酸素shell燃焼中にカリウムが生成されやすくなることがわかった。しかし、overshoot parameterが大きい場合に常にカリウムが生成されやすくなるわけではなかった。また、他の中質量元素の生成量も増加する一方でネオンの生成量が減少した。 我々はまた、大質量星の多次元最終進化やニュートリノに関する共同研究を行なった。大質量星の多次元最終進化では太陽の22, 27倍の初期質量の星について重力崩壊直前の約65, 200秒間にわたる酸素燃焼層における対流の3次元流体シミュレーションを行なった。そして、酸素/珪素対流層でマッハ数0.1に達する大規模で強い乱流が起こることを示した。これは超新星の爆発機構に影響を与える可能性がある。また、超新星ニュートリノについては方位角方向の非対称性を考慮して超新星爆発時におけるニュートリノ集団振動について調べ、この非対称性に起因するフレーバー変換が起こることを数値的、解析的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は太陽系金属量の大質量星について後期進化における物質混合と中質量元素合成のovershoot parameter依存性について調べた。当初の予測通りに大きなovershoot parameterの場合に対流境界層を通した物質混合が促進されカリウムおよび中質量元素の生成量が増加したモデルもあったが、全ての質量の星についてカリウムの生成量が増加したわけではなかった。さらに、酸素層における組成分布に星の初期質量に対する系統的な依存性が見られなかった。また、大きなovershoot効果の場合にはカリウムの増加よりもむしろ珪素や硫黄の増加が顕著に見られることがあり、銀河化学進化に適用するような星の質量分布で平均した組成を考えるとカリウム生成量がまだ足りない可能性がある。このため、現在の段階でのまとめ方について考える必要がある。研究会の発表では他の初期質量の星でのカリウムの増加の可能性について言及があったため、より軽い質量やこれまで計算した質量の間の質量の星についても進化計算を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度については当初の予定通りまず金属量が0の初代星に対応した大質量星について後期進化における対流混合のovershoot parameter依存性について調べる。ここでは星の初期質量による違いをより詳細に調べるため8, 9, 10, 12, 15, 17, 20, 22, 25太陽質量の初期質量の星を考える。overshoot parameterの範囲は従来と同じとする。そして、これらの星について超新星、極超新星の爆発計算と爆発的元素合成の計算を行うことで初代星超新星から放出される物質の組成分布を求める。さらに個々の星から放出された物質の組成分布から星の初期質量分布で平均した物質組成分布を求め金属欠乏星で観測されている組成分布と比較する。 初代大質量星の進化計算が一通り終えたら、その結果をまとめながら太陽系金属量の星についていくつかの初期質量の星についても進化計算を行う。そして初期質量の違いがカリウムや中質量元素の生成量に与える影響や、金属量に対する依存性について調べる。 初代星が進化した超新星モデルにおいて金属欠乏星で観測されるカリウム量を説明できる程度のカリウムが生成された場合には銀河化学進化におけるカリウム量の変化について議論すべく低金属量の大質量星の進化計算を行い、overshoot parameterに対する依存性を調べる。
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