2020 Fiscal Year Annual Research Report
Structural formation of quasicrystal and model selection of the target structure using the phase-field crystal model
Publicly Offered Research
Project Area | Hypermaterials: Inovation of materials scinece in hyper space |
Project/Area Number |
20H05259
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
義永 那津人 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (90548835)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フェイズフィールドクリスタルモデル / 機械学習 / ベイズ推定 / フェイズフィールドモデル / 偏微分方程式 / ミクロ相分離 / モデル推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、フェイズフィールドクリスタル(PFC)モデルを用いて、結晶構造が密度場の高密度領域として表現し、順問題と逆問題の二つの視点から準結晶の構造と安定性の解析を行う。順問題では、自由エネルギー汎関数とその中のパラメーターと、得られる準結晶構造とその安定性との関係を調べていく。モデルを拡張して、例えば、複数の原子種を陽に取り入れた複数の密度場のPFCモデルを用いることによって、現実の材料と比較可能でかつ安定な準結晶を形成するためのメカニズムを探る。また、逆問題として、与えられた準結晶の構造やパターンから、そのターゲットを再現する最適なPFCモデルとパラメーターを推定する手法を開発する。 本年度では、単一の密度場の系に対し、長さスケールが二つ以上あると12回対称性を持つ二次元準結晶が形成できることを明らかにした。また、二つの密度場が結合した系を構築し、適切な相互作用によって12回対称性を持つ準結晶が形成できること、そして、様々な結合の可能性の中から最も安定に準結晶を形成できるものを、逆問題から推定した。また、三次元の構造では、ブロック共重合体で準結晶が準安定的に観測される領域の近傍で安定状態として観測されているFrank-Kasper構造を形成するパラメーターを、逆問題によって推定した。この手法では、ターゲットなる構造は人工的に作ったもので、PFCのパラメーターの解としては未知であったが、我々の機械学習の手法により自動的に最適なモデルとパラメーターを推定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、目的となるターゲット構造をデータとして与えた時に、その構造を生成するPFCモデルと方程式の中のパラメーターを推定する枠組みを構築した。この手法では、正解がない構造、つまり、方程式の解が手元になくても、人工的にターゲット構造を作成することによってその構造を生成するモデルを知ることができる。得られたモデルから、構造形成に必要な要素、例えば、長さスケールの数や、複数の長さスケールの比の値などの情報が得られる。また、本手法を拡張することによって、ノイズが入った構造や欠損、あるいは構造に欠陥がある場合にも、欠陥がない結晶あるいは準結晶構造を得られている。二次元においては、複数の長さスケールを持つモデルだけでなく、複数の密度場を持ったモデルについても、準結晶構造を得るための長さスケールの比などの情報を推定することに成功している。複数の密度場を持つモデルは合金などに対応しており、今後実験との比較も可能になる結果だと考えている。さらに、準結晶の形成には複数の長さスケールが適切な無理数比になっていることが必要だと考えられてきたが、複数の密度場を持つ場合、従来知られていた長さスケールの比ではなく、より単純な無理数比でも準結晶が形成可能であることが分かった、そして、この形成メカニズムは従来のモデルよりも安定に準結晶を形成できることも分かってきている。また、二次元準結晶だけでなく、三次元の構造についての研究も進んでおり、double gyroid構造や、Frnak-Kapser A15, C15構造などを生成するためのモデルが推定できるようになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、三次元の準結晶構造に特に注目して研究を行っていく。二次元方向に12回対称性を持ち、その垂直な軸については周期的な構造を持つ準結晶について、どのようなモデルによって形成できるのか推定を行っていく。また、粒子モデルを用いて、準結晶構造の形成条件や安定性についても研究を行っていく。パッチ粒子と呼ばれる非等方な相互作用を持つ粒子の自己凝集構造として準結晶が現れることは明らかになりつつある。そこで、逆問題的手法を用いて、目的となる準結晶構造があった時に、どのような非等方性、つまり対称性を持った粒子を用いて自己凝集させればいいのかについて、推定の手法の開発を行っていく。 我々が開発した推定手法では、より広い初期構造から安定にターゲット構造を形成できるモデルを推定することができる。この点に関して、理論的な考察を行い、どのようなメカニズムでこのような推定が可能になるのか、またどのような限界があるのかなどの側面についても明らかにしていく。データから方程式を推定する手法はいくつか知られているが、本手法は他の手法にはない特色を備えている。他の手法を整理し、比較を詳細に行うことによって、どのようなデータであれば本手法を用いるべきなのかについてすみ分けを明らかにしていきたい。 我々の手法により、準結晶のみならず様々な構造を再現するモデルを推定することが可能になる。現在はPFCモデルに適用しているが、他のクラスのモデル、例えば反応拡散方程式や流体のような偏微分方程式で記述されるパターン形成の問題にも応用可能であると考えている。様々な問題への応用を検討しつつ、国内外の研究会に積極的に参加し有用性を広めていきたい。
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Research Products
(9 results)