2020 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of magnetic structure and physical phenomena of quasicrystal by cluster multipole method
Publicly Offered Research
Project Area | Hypermaterials: Inovation of materials scinece in hyper space |
Project/Area Number |
20H05262
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 通人 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10596547)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、準結晶を特徴づける対称性と準周期性の観点から、準結晶で発現しうる磁気構造を解析する理論ツールを発展させることで、現在その発見に向けて精力的な研究が行われている準結晶の磁性現象の研究基盤を構築することにある。 今年度はクラスター多極子法による磁気構造の解析プログラムを近似結晶に適用し、近似結晶における磁気構造と秩序パラメータの関係を調べ、異常ホール効果のような磁性体に特有の輸送現象が発現することが可能な磁気構造について検討を行なっている。また、周期性を持たない準結晶における磁気構造解析への応用を念頭に、原子周辺の局所的な磁気モーメント配置を多次元ベクトルによって表現することで磁気構造の局所環境の類似度などを計算する理論手法を発展させ、周期系の磁気構造を中心としたテスト解析を実施している(論文準備中)。 クラスター多極子法と第一原理計算による反強磁性体の物性解析については解説記事を執筆した他(鈴木, 柳, 有田, 固体物理, 55, 561 (2020))、クラスター多極子法による結晶対称性に適合する磁気構造の生成と第一原理計算による安定性評価を組み合わせた、磁気構造のハイスループット予測システムをもとに、磁気構造の予測精度を系統的に評価した研究に関する論文を出版している(M.-T. Huebsh et al, Phys. Rev. X 11, 011031 (2021))。 これらのクラスター多極子法による磁気構造の解析理論の発展とそれらを活用して得られた結果は、今後の準結晶の磁気構造研究を進める上で重要な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁性表現論の手法であるクラスター多極子法を活用して近似結晶の磁気構造解析を実施し、近似結晶の磁気構造と秩序パラメータや発現物性の関係が明らかに成った他、周期性を持たない準結晶の磁気構造解析を行うための理論ツールとして、磁気構造の局所環境を多次元ベクトルで表現する理論手法の開発に成功している。これらの理論手法と解析によって得られた知見を活用しさらに理論を発展させることで、今後の準結晶の磁気構造の理論手法の研究基盤の構築へと繋がることが期待できる。また、クラスター多極子法を用いた磁気構造生成によって生成される磁気構造を初期値として用いるハイスループット第一原理計算による安定磁気構造の評価手法を確立し、論文を出版している(M.-T. Huebsh et al, Phys. Rev. X 11, 011031 (2021))。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの研究を通して発展させた磁気構造の局所環境の表現手法やクラスター多極子法による磁気構造解析手法を、周期を持たない準結晶の磁気構造解析ツールへと発展させる拡張に取り組む。局所環境の表現手法は理論的な枠組みとしては非周期系への適用が可能であるが、解析に必要となる系の規模が大きくなるため、大規模系への適用に向けた計算プログラムの改良に取り組む。また、クラスター多極子法を適用した準結晶における磁気構造の解析手法の研究では、準結晶に特有の点群対称性に適合する磁気構造解析を可能にする改良に取り組むほか、補空間を利用した高次元代数を用いた理論拡張に取り組み、準結晶の準周期性と磁気構造の適合性について新しい知見の獲得を目指す。
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