2020 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical and Numerical Study on the Novel Quantum Spin Phase in the Hyper Materials
Publicly Offered Research
Project Area | Hypermaterials: Inovation of materials scinece in hyper space |
Project/Area Number |
20H05274
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
坂井 徹 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (60235116)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 量子スピン液体 / フラストレーション / 準結晶 / ハイパーマテリアル / 非周期系 |
Outline of Annual Research Achievements |
新しいフラストレーション系として、五角形をベースとするフローレット・ペンタゴン格子と呼ばれるタイリングの問題に現れる格子上の反強磁性量子スピン系を取り上げた。この系に対して、ランチョス法に基づく有限系の数値対角化を適用し、磁化過程を研究した。その結果、磁化プラトーや磁化ジャンプという興味深い現象が起きることを理論予測することに成功し、現在そのメカニズムを解明する研究を進めている。 本研究の重要な目標であるハイパーマテリアル格子上の量子スピン系としては、並進対称性のない五回対称な格子上の反強磁性量子スピン系の研究に着手した。これも五角形をベースとするフラストレーションがあるうえに、並進対称性がないことから、量子スピン液体の実現が期待される。有限系の数値対角化による磁化曲線の計算から、この系も磁化プラトーや磁化ジャンプの可能性が示唆される結果がでており、今後の詳細な解析が待たれる。 ハイパーマテリアル新学術領域の中に、ダイマー状態が厳密な基底状態になることで知られるシャストリ―・サザーランド系の実験的研究をしているグループが複数あることから、連携の可能性を求めて、この系の理論的研究を行った。世界最大規模の有限系の数値対角化による解析の結果、二つの交換相互作用パラメータの比を変えたときに、新しいスピンギャップ相への量子相転移が起きる可能性が示唆された。この新しい量子相転移は、これまでに予測されていたプラケット・シングレット相とは異なるプラケット上でシングレットを形成する新奇スピンギャップ相ではないかと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標である並進対称性のない五回対称なハイパーマテリアル格子上の量子スピン系の研究に先立って、五角形をベースとするフローレット・ペンタゴン格子上の系を研究し、フラストレーションを反映した興味深い成果をあげている。さらに、目標である並進対称性のない五回対称なハイパーマテリアル格子上の系にも着手し、有限系の数値対角化コードを完成し、磁化曲線の解析から、磁化ジャンプや磁化プラトーの可能性を示唆する状況まで進展している。さらに、領域内で実験的成果があがっているシャストリ―・サザーランド系について、新しい理論的成果をあげ、領域内共同研究による貢献の可能性も出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
フローレット・ペンタゴン格子上の反強磁性量子スピン系について、相互作用パラメータをいくつか変化させた場合に、すでに発見した磁化ジャンプや磁化プラトーがどのように変るか、量子相転移等を解析して、磁場中相図を求める予定である。目標である並進対称性のない五回対称なハイパーマテリアル格子について、より大きいシステムサイズの系の数値対角化を実行し、可能性が示唆されている磁化ジャンプや磁化プラトーが無限系においても起きるかどうかを解明したい。また、どのような対称性の破れが可能かを検討し、その秩序が量子揺らぎで融解する量子スピン液体の可能性を探る予定である。シャストリ―・サザーランド系については、やはりシステムサイズをさらに上げた数値対角化を実行することにより、これまでに示唆されている新しい量子相転移の可能性を明確にする予定である。
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