2020 Fiscal Year Annual Research Report
準結晶における機械学習分子シミュレーション手法の確立とその有限温度物性の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Hypermaterials: Inovation of materials scinece in hyper space |
Project/Area Number |
20H05278
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
永井 佑紀 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 副主任研究員 (20587026)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 準結晶 / 機械学習 / 自己学習ハイブリッドモンテカルロ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
準結晶あるいはその近似結晶(準結晶に似た結晶構造ではあるが周期的な結晶)を理論的に取り扱うためには、実空間の非一様性をうまく取り入れた計算が必要である。本研究では、準結晶やその近似結晶の物性を計算するために、効率的なシミュレーション手法を開発することが目的である。特に、準結晶あるいはその近似結晶の有限温度の物性を調べるためには、第一原理計算による分子シミュレーションが必須である。しかしながら、第一原理計算は扱う原子数が増えていくと急激に計算コストが上昇し、準結晶あるいはその近似結晶を扱うことが極めて難しい。そこで、近年我々が開発している自己学習ハイブリッドモンテカルロ法という手法を用いて、機械学習分子シミュレーションを行うこととした。機械学習分子シミュレーションでは、第一原理計算によって計算されるエネルギーを再現するようなニューラルネットワークを構築する。従来の手法では、ニューラルネットワークを可能な限り精度よく構築しなければ、近似誤差によってまともなシミュレーションができなかった。一方、自己学習ハイブリッドモンテカルロ法では、分子動力学とモンテカルロ法の二つを用いることにより、計算精度を元の第一原理計算分子動力学と厳密に等しくすることができる。また、自己学習ハイブリッドモンテカルロ法では、効率的にニューラルネットワークを作ることができるため、得られたニューラルネットを機械学習分子動力学シミュレーションに用いることで、巨大な系を高速にシミュレーションすることが可能である。そこで、この手法を準結晶およびその近似結晶に対して適用を行った。特に、準結晶は周期を持たないために第一原理計算と相性が極めて悪い。そこで、近似レベルが異なる近似結晶を複数用意し、一つの近似結晶で学習したニューラルネットワークを別の近似結晶に適用することを試みた。その結果は論文にまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
準結晶および近似結晶に対して自己学習ハイブリッドモンテカルロ法の適用を試みた。準結晶は合金系が多いが、このような系でも学習が成功していることを確認できた。ただし、原子数が多いために学習には工夫が必要であったため、当初の想定よりも研究に時間がかかってしまっている。しかし、目標を達成することは可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
自己学習ハイブリッドモンテカルロ法によって近似レベルの高い近似結晶の物性の計算を行う。特に、分子シミュレーションでなければ実行できない熱力学的物性の温度依存性について調べることで、準結晶および近似結晶のシミュレーション手法の確立を目指す。
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