2020 Fiscal Year Annual Research Report
ミスフィット層状カルコゲナイドにおける高次元電子状態の実空間分光
Publicly Offered Research
Project Area | Hypermaterials: Inovation of materials scinece in hyper space |
Project/Area Number |
20H05280
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
幸坂 祐生 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (80455344)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
準結晶に代表される非周期結晶は、高次元超空間における周期結晶(「ハイパーマテリアル」)の物理空間における断面として記述される。本研究では、電子系における高次元現象の探索を目的として、走査型トンネル顕微鏡を用いた分光イメージング測定を行う。 本年度はミスフィット層状カルコゲナイド(PbSe)1.16(TiSe2)2について測定を行った。この物質は岩塩型構造を持つPbSe層と八面体構造を持つTiSe2層が積層した結晶構造を持つ。これらの構成層は対称性と周期性が異なっているため、ミスフィット層状カルコゲナイドはハイパーマテリアルとしての性質を持つ。さらに優れたへき開性を持つため、走査型トンネル顕微鏡に適した清浄平坦表面が容易に得られる。実際に、これまでに行った測定において、原子分解能での走査トンネル顕微鏡像が得られた。また、微分コンダクタンス像にはエネルギーに依存して周期が変化する準粒子干渉パターンが明瞭に観察された。理論シミュレーションの結果、これはTi 3d軌道由来のバンドに起因していることが確認された。同時に、エネルギーによって周期が変わらない超格子周期構造が見出された。この超周期構造はこれまでに知られている電荷密度波とは異なり、3つの基本ベクトルによって指数付けされる。この特徴は非周期的な電子超構造の存在を示唆しており、ハイパーマテリアルとしてのミスフィット層状カルコゲナイドに特有の電子状態を反映している。 また、測定データの解析を行う中で、機械学習的手法(教師なし学習・クラスタリング)を用いた走査型トンネル顕微鏡像の新しい解析手法を考案し、Pythonで実装・公開した。手法の詳細は論文として出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原子分解能が得られること、明瞭な準粒子干渉パターンが得られること、さらに、ミスフィット層状カルコゲナイドに特有の電子状態を見出したことで、詳細な測定・解析が可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
構成元素の一部を置換した物質について同様の測定を行い、これまでに得られた電子状態の特徴が何に由来しているのかを解明する。具体的には、Pbを同価数でよりイオン半径の小さなSnで置換した(SnSe)1.18(TiSe2)2を測定対象として研究を進める。
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Remarks |
新しい解析手法の実装の公開先
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