2020 Fiscal Year Annual Research Report
固体電解質/高品質単一方位グラフェンによるリチウム挿入脱離現象の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Interfacial Ion Dynamics for Solid State Ionics Devices |
Project/Area Number |
20H05287
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
乗松 航 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30409669)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グラフェン / 蓄電固体デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者がこれまでに取り組んできたSiC基板上大面積高品質単一方位グラフェンを、固体電解質との界面における電気化学反応研究のモデル試料として用いることで、その詳細を明らかにすることを目標としている。代表者の高品質エピタキシャルグラフェン成長技術を用いて作製した試料に対して、研究協力者である入山・本山グループにおいて電気化学セルを作製して、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定および電気化学インピーダンス(EIS)測定を行うことができた。電気化学測定後の試料に対してラマン分光測定を行った結果、Liの挿入に伴ってグラフェン/基板の結合が切断されたことがわかった。また、一部の試料のCV測定の結果からは、酸化ピークが2本検出された。これは、異なる電位でLiが脱離したことを示唆している。しかしながら、他の試料ではこのような結果は得られなかった。現在は、試料表面におけるグラフェンの被覆率の異なる一連の試料を作製して測定を行っているが、被覆率に対して測定結果が系統的に変化していない。従って、より精密な実験を行う必要がある。得られた研究成果について、2020年度7月および12月の新学術領域会議、9月の研究会で報告するとともに、2021年3月の応用物理学会におけるグラフェンに関するシンポジウムで一部を紹介した。また、多層グラフェンにおけるLi挿入脱離反応に関する入山・本山グループとの共同執筆論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表者がこれまでに確立してきたSiC上グラフェン成長技術に基づいて、高品質なグラフェン試料を作製した。まず、SiC基板との結合を持つ炭素原子層であるバッファー層のみを形成し、固体電解質LiPONを蒸着して電気化学測定を行った。ここでバッファー層とは、面内の原子配列はグラフェンとほぼ同じであるものの、一部の炭素原子が直下のシリコン原子と結合している層のことであり、この結合のためにグラフェンとしての電気伝導などの性質は持たない。測定後の試料に対してラマン分光測定を行うことにより、バッファー層とSiCの結合が切断されて界面にLiが挿入されることにより、バッファー層がグラフェン化したことを示唆する結果が得られた。また、表面におけるグラフェンの被覆率が系統的に異なる試料を作製し、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。測定の結果、一部の試料において2本の酸化ピークが検出された。これは、異なる電位でLiが脱離したことを意味している。すなわち、2本の酸化ピークは、グラフェン/バッファー層間およびバッファー層/SiC間からの脱離に対応することが示唆される。ただし、グラフェン被覆率に対して測定結果が系統的に変化しておらず、さらに詳細を明らかにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの結果の中で、CV測定で酸化ピークが2本観察されたのは一部の試料であるため、再現性の確認が必要である。また、被覆率やグラフェン層数の異なる試料において、2本のピーク強度比が系統的に変化することを明らかにし、現象としての確立を行う。現状では、電気化学測定結果が系統的に変化していないため、バッファー層のみの試料や2層グラフェン試料も作製して詳しくCV測定及び電気化学インピーダンス測定を行っていく。Liインターカレーションが生じたか否かは、ラマン分光測定を行うことにより調べることができる。さらに、ラマンマッピング測定を行うことで、インターカレーションが生じた箇所と生じていない箇所の面内分布を明らかにできる。これを利用して、試料表面においてどのような箇所からインターカレーションが生じ、どのように進行していくかを明らかにする。具体的には、グラフェンが形成されるSiC表面には、平坦なテラスに加えて原子レベルの段差であるステップが存在する。これまでに行った、水素のインターカレーションでは、ステップの存在とは一見無関係に、テラス上のランダムな箇所で水素の挿入が生じることがわかっている。Liインターカレーションについても同様の実験を行うことで、電気化学反応におけるLiインターカレーションの微視的メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(3 results)