2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of force-fields and analysis of ion conduction at interfaces of battery materials
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Interfacial Ion Dynamics for Solid State Ionics Devices |
Project/Area Number |
20H05290
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 亮 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70560126)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 蓄電材料 / 界面 / 分子動力学 / 原子間力場 / 最適化問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
安全性などの観点から次世代電池として全固体電池が期待され,既に実用化されてきているが,未だに液系に匹敵するイオン伝導度を持つ固体電解質は実用化されていない.焼結された固体電解質における粒界でのイオン伝導抵抗が大きいことが一因だが,粒界抵抗と組成・構造の関係は十分に解明されていない.本研究では,組成・構造が与えられたときに粒界においてどのような原子構造が実現し,イオン伝導抵抗にどう影響するかを,分子動力学(MD)シミュレーションを用いて原子スケールから解明することを目的としている. さまざまな組成・構造の候補材料のMDシミュレーションを行うため,組成・構造が与えられた際に,量子力学的手法を用いた高精度ではあるが計算負荷の大きなMDシミュレーションから計算負荷の低い近似的な原子間力場を非常に効率的に構築する手法を開発した.本手法は,従来法とは異なり,高精度MDから動的な物理量の分布関数を参照データとして原子間力場のパラメータを最適化することで,MDシミュレーションを行った際に安定な力場を構築することができる.また,パラメータ探索範囲を自動的に更新する新手法を用いてメタヒューリスティクスを行うことで,従来は試行錯誤を必要としていた作業を効率化することに成功した.本研究で開発した手法を用いることで,非常に効率的に高精度な原子間力場を構築することができるようになり,新規固体電解質材料であってもイオン伝導挙動のMDシミュレーションを即座に行うことが可能となった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた通り,課題初年度では,種々の固体電解質材料のMDシミュレーションを可能にするため,ハイスループット力場構築手法の開発に取り組んだ.多くの異なるパラメータセットに対してMDシミュレーションを行い,その結果から動径・角度分布関数を取得し,参照データと比較することを反復していくメタヒューリスティクス手法を実装した.多くの酸化物,硫化物,フッ化物の固体電解質候補材料に対して,本研究の開発手法を用いて原子間力場を作成し,作成した力場を用いてイオン伝導の活性化エネルギー評価を行った.本手法が多くの異なる組成・構造に対して有効であり,イオン拡散の活性化エネルギーを定量的に良く再現すること,種々のドーピング元素の効果も良く再現することが確認できた.また,本プログラムを,MDシミュレーションから得られるあらゆる物理量に対して適用可能となるよう実装し直し,非晶質材料の中性子散乱データに対しても力場パラメータを最適化することが可能とした.こうして得られた力場を用い,LPS材料の結晶・非晶質混在系におけるイオン伝導機構に関するMDシミュレーション解析に着手した.
|
Strategy for Future Research Activity |
本課題で開発した力場を用いて,ある特定の酸化物材料の多結晶体のMDシミュレーションを行い,結晶粒界におけるイオン伝導抵抗機構に関する解析を行う.そのため,(ア)固体電解質材料において原子構造から結晶とその他の構造を特定するアルゴリズムを開発し,多結晶モデルのMDシミュレーションにおいて原子構造から粒界位置を特定することを可能とする.(イ)固体内でイオンが拡散するMDシミュレーションから,局所的なイオン伝導度を計算する手法を開発する.(ウ)粒界における局所的なイオン伝導度解析を行い,粒界の原子構造とイオン伝導の関係を明らかにする. 異なる構造間の普遍的なイオン伝導抵抗要因を解明するため,NASICON型,garnet型,perovskite型などの異なる構造の酸化物で,上記と同様,多結晶体のMDシミュレーションを行い,粒界における原子構造とイオン伝導抵抗の関係を調べる.この関係の異なる構造における類似点と相違点を解析し,組成・構造とイオン伝導抵抗の関係性を調べる. また,固体電解質として重要なLPS系材料の結晶・非晶質混在系に対して,本課題で開発した力場開発手法および局所イオン伝導度解析を援用し,結晶・非晶質混在系において結晶,非晶質のどちらよりもイオン伝導度が上昇する実験事実の解析も行う.
|
Remarks |
出版論文(APL Materials 8, 081111, (2020)) がFeatured Articleに選出され,その紹介文がウェブニュース(1)として取り上げられた.
|
Research Products
(5 results)