2020 Fiscal Year Annual Research Report
細胞非自律的オートファジーが駆動する細胞競合の分子機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Multimode autophagy: Diverse pathways and selectivity |
Project/Area Number |
20H05320
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井垣 達吏 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (00467648)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞競合 / オートファジー / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織中で隣り合う同種の細胞間にわずかな性質の差が生じた際、細胞間相互作用を介して一方の細胞に細胞死が誘導される現象が存在し、細胞競合と呼ばれている。例えば、ショウジョウバエ上皮組織中で近接する細胞間でタンパク質合成能に差が生じると、タンパク質合成能の低い細胞が細胞競合の敗者となって排除される。研究代表者らは最近、このような細胞競合の実行にオートファジーが中心的な働きをすることを明らかにした。具体的には、正常細胞(勝者)に近接する変異細胞(敗者)で局所的にオートファジーが活性化し、これがNFkBを介して細胞死遺伝子hidの発現を誘導することを見いだした。そこで本研究では、細胞競合の敗者細胞がオートファジーを活性化する機構、およびオートファジーの活性化がNFkB依存的にhidを発現誘導する機構を明らかにすることで、細胞競合の分子機構の解明とオートファジーの新たな役割の解明を目指す。これまでに、ショウジョウバエ上皮においてタンパク質合成能の低下を引き起こすHel25E遺伝子変異がオートファジー依存的な細胞競合を誘導すること、また細胞競合の勝者となるがん抑制経路Hippo経路の変異細胞が隣接する正常細胞(敗者)にオートファジーを誘導して細胞死を起こすことを見いだしている。そこで令和2年度は、まずHippo経路変異が近接する正常細胞にオートファジーを誘導するメカニズムを解析した。その結果、Hippo経路の下流で活性化されるYkiにより発現誘導されるmicroRNA bantamがTOR経路を活性化し、これが近接する正常細胞にオートファジーを誘導するのに必要十分であることを見いだした。さらに、Hel25E変異により誘導される細胞競合のモデル系を用い、細胞非自律的なオートファジー誘導に必要な複数の分子を同定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、細胞競合の敗者細胞が勝者細胞に近接した際にオートファジーを活性化する機構、およびオートファジーの活性化がNFkB依存的にhidを発現誘導する機構を明らかにすることを目指す。令和2年度は、敗者細胞のオートファジー活性化機構を明らかにするため、まずHippo経路変異細胞が近接する正常細胞にオートファジーを誘導するメカニズムを解析した結果、勝者細胞のTOR経路の活性化が敗者細胞のオートファジー誘導に必要であることを見いだした。すなわち、勝者―敗者間のTOR経路活性の差がオートファジー活性制御に重要であることがわかった。さらに、細胞競合の遺伝学的解析からオートファジー誘導に必要な複数の分子を同定することにも成功し、今後の遺伝学的解析を加速させることが可能になった。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、細胞競合の勝者となるHippo経路変異細胞で発現誘導されるmicroRNA bantamがTOR経路を活性化する機構を解析するとともに、細胞間のTOR経路活性の差が敗者細胞にオートファジーを誘導する機構を遺伝学的に明らかにする。また、敗者細胞で活性上昇するオートファジーがNFkBを活性化する機構について、NFkBの阻害タンパク質IkBに着目しながら解析を進める。さらに、これまでに見いだした細胞非自律的オートファジー誘導に必要な分子群について、それらの役割と動作機序を遺伝学的に解析する。
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Research Products
(11 results)