2020 Fiscal Year Annual Research Report
分化転換装置としての液胞バイモーダル機能の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Multimode autophagy: Diverse pathways and selectivity |
Project/Area Number |
20H05332
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 有紀 九州大学, 医学研究院, 准教授 (90508186)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内皮-造血転換 / 液胞 / アクアポリン / エンドソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
内皮-造血転換は、循環器システムの両輪をなす血管内皮細胞と造血幹細胞の分岐点であるため非常に重要な現象であるが、扁平な血管内皮細胞から球形の造血細胞への形態変化を制御する細胞生物学的なメカニズムは未解明である。造血細胞を生み出す血管内皮細胞は内部に巨大な液胞構造を有する。この巨大液胞は、①液胞内への水移動による血管内皮細胞の球状化と②造血細胞への分化転換に伴うオートファジーの二局面で働く可能性がある。この仮説を検証し、細胞の分化転換現象における液胞の役割を解明するため、以下の実験解析を行った。 免疫電子顕微鏡観察(先端バイオイメージング支援プラットフォームによる共同研究)から、水チャネルAQP1が造血性血管内皮細胞の細胞膜および液胞膜に局在することが判明した。球状化が進んだ細胞内ではAQP1陽性の巨大液胞が退縮し、エンドソーム様の小胞膜へのA局在変化が見られことから、AQP1陽性の巨大液胞は退縮の際にエンドソーム経路で分解される可能性が示唆されたため、エンドソームレポーター EGFP-2xFYVEの導入実験を行い、AQP1陽性小胞がエンドソームであることを確かめた。また、in vitro内皮-造血転換システムを用いてEGFP-2xFYVEを導入した造血性血管内皮細胞群のタイムラプス観察解析を行い、培養条件下においても内皮-造血転換中の細胞内においてAQP1がエンドソームに局在することを明らかにした。水流入能が低いAQP1(R196H)変異を強制発現させた細胞では液胞サイズの顕著な低下が起こったことから、植物と同様に動物細胞においてもAQP1は液胞の拡張に関わる可能性が示唆された。また、in vitro内皮-造血転換システムで分化転換させた細胞群についてAQP1陽性血管内皮細胞のRNA-seq解析を行い、液胞においてAQP1と協調的に働く可能性がある候補遺伝子群を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で着目している造血性血管内皮細胞特異的な巨大液胞構造について電子顕微鏡観察を行うことで、液胞退縮メカニズム解明の端緒が得られた。また、in vitro内皮-造血転換システムを確立させ、レンチウイルスを用いた遺伝子導入とタイムラプス観察解析を運用できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitro内皮-造血転換システムを用いて造血性血管内皮細胞における液胞およびエンドソーム構造の時空間的な変化をタイムラプス観察解析により明らかにする。また、前年度に実施したAQP1陽性血管内皮細胞のRNA-seq解析で得られた高発現レベルの液胞関連遺伝子群について、CRISPR/Cas9ゲノム編集法を用いた機能欠失(もしくは阻害剤添加)実験を実施し、内皮-造血転換への影響を調べる。
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