2020 Fiscal Year Annual Research Report
受精後の精子尾部が与える全能性への影響の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Program of totipotency: From decoding to designing |
Project/Area Number |
20H05366
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本 昌和 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (60580496)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 割球間競合 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス着床前胚がin vivoで発生した場合は両割球が均等に全ての組織に寄与するのに対し、in vitroで発生した場合では2細胞期の割球は胚体外組織については均等に寄与するものの、エピブラストでは均等に寄与せず、どちらか片割球由来の細胞のみが寄与することを発見した。古典的な発生生物学的実験から、マウスの2細胞期胚の割球を分離しても、それぞれが後期胚盤胞まで発生しエピブラストを形成することから、in vitroでは2細胞期の片割球のみが全能性を失う「割球間競合」が起きていることが示唆された。 そこで本研究では、マウス2細胞期の割球の全能性は環境依存的であることを示すとともに、in vitroにおいて割球間に差がうまれる原因を解明することやin vivoにおいては割球間細胞競合を抑制していることから、それにはなんらかの生理的意義があると考えられるため、その可能性を検証するべく、まずは着床前のステージを母体内で発生しても2細胞期の片割球のみが胚体に寄与するマウスの作成方法を確立した。これを用いて2細胞期の片割球のみが胚体に寄与する場合と両割球が寄与する場合で発生効率を比較している。この結果によって、これまで等価で全能性を持つと考えられてきた2細胞期で既に割球間で発生のポテンシャルに差があるのか、さらには母体内では割球間競合を抑制する意義などを見出すことができると期待される。また精子尾部の入った割球を遺伝学的にラベルするため、Cre依存的に割球をDsRedでラベル可能なマウスを顕微操作に耐性の強いBDF1バックグラウンドで作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に進展している点として、in vivoでもin vitroのように2細胞期の片割球のみがエピブラストに寄与する胚を作成する手法を確立できたことが挙げられる。また、Cre依存的に蛍光ラベル可能なマウスを顕微操作に強いBDF1バックグラウンドで作成できたことなどが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス胚2細胞期の割球間の差における精子ミトコンドリアの影響を明らかにする。また、in vivo では低酸素状態を維持し割球間の競合を抑制していることから、競合が起こらないよ うにする(2細胞期の両方の割球があるほうが、後の発生に望ましいような)生理的意義があると考えられる。その意義を追求するため、エピブラストが片割球由来の胚の発生率が両割球由来のそれに比べて異なるのか、またその発生率の違いの原因を解明する。
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