2020 Fiscal Year Annual Research Report
Effects of histone modification primed in spermatogonia stem cells on the next generation totipotency program
Publicly Offered Research
Project Area | Program of totipotency: From decoding to designing |
Project/Area Number |
20H05370
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
大保 和之 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70250751)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 精子幹細胞 / エピゲノム / 世代間伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
晩婚化、少子化が社会問題になっている一方で、挙児を希望しながら不妊に悩むカップルの存在も重要な問題である。その頻度は、実にカップルの10数%と言われている。また、不妊治療にかかる費用も多額となっている。女性の社会進出とともに、不妊カップルの増加原因として、出産年齢の高齢化が注目を浴びやすいが、実際には、男性不妊と女性不妊の頻度は一対一であると言われている。顕微受精、体外受精に代表される生殖補助医療の発達により、一部の不妊の問題は解決されつつある。しかし、生殖補助医療技術をもってしても、不妊となる方々も多い。その原因となる配偶子の異常の理解は、これまで運動障害、形態障害といった表現型とそれに関連する分子が中心で、エピジェネティクスの領域では、まだ始まったばかりの段階である。特に、これまで長年、精子においてヒストンは残存せず、プロタミンと置換されると言われてきたので、精子を介したヒストンの次世代への情報伝達は行われないと思われてきた。しかし、ごく最近、精子にヒストン蛋白が残っているとの報告を受け、私どもは、精子が運ぶヒストン修飾の異常が、受精後の次世代の初期発生にどのような変化を与えるのか、研究することとした。そのために、特定のヒストン修飾に異常が起こった精子を用いて、次世代の発生への影響を検討している。これにより、精子に残されているヒストン、ひいてはヒストン修飾に、どのような生物学的意義があるかも同時に知ることができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私どもは、精子幹細胞研究を長年に渡り行ってきたが、これまで初期発生過程の研究は行っていなかった。そこで、まず、体外受精、初期胚の培養などの技術習得を、本新学術領域内のネットワークの支援を受けながら行った。さらに、精子のヒストン修飾解析手法は特殊であるため、これも共同研究にて技術習得を行った。さらに、ヒストン修飾解析手法が日進月歩であり、より少ない細胞を用いた解析が可能となっている。これも、本新学術領域内のネットワークの支援を受けながら、新規手法と、さらにそれをアップデートした変法を習得した。以上の習得した実験手法を利用し、目的とするヒストン修飾酵素の欠損精子を用いた体外受精による次世代発生への影響を検討した。まず、標的ヒストン修飾酵素遺伝子を精子形成過程の終了に近い時期に欠損させても、次の世代の初期発生に異常が無いことを確認した。次に、標的ヒストン修飾酵素遺伝子を、精子形成の体細胞分裂期に欠損させた精子を準備し、そのヒストン修飾欠損領域を同定した。また、その精子を体外受精に用い、2、4細胞期といった初期胚における遺伝子発現の相違を同定した。
|
Strategy for Future Research Activity |
標的ヒストン修飾酵素遺伝子を、精子形成過程の体細胞分裂期に欠損させた精子のエピジェネティックな状態を調べてきた。また、その精子が受精した初期胚の遺伝子発現異常を調べた。今後それらの結果のデータ解析を行い、正常と比較して脱落しているヒストン修飾部位の結果と、初期胚において遺伝子発現に異常を示した遺伝子の相関関係などを比較して、それらに何らかの関連がないか探索する。また、初期胚に起こっている遺伝子発現異常を起こしている遺伝子近傍の当該ヒストン修飾に、どのような変化が起こっているか調べる。これらの情報を統合することにより、精子形成過程において、ヒストン修飾挿入に異常が起こった精子が受精することにより、直近の世代の発生に、どのような異常をもたらすのか明らかにすることができる。
|