2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of molecular mechanisms underlying the acquisition and loss of totipotency by identification of authentic totipotent cells
Publicly Offered Research
Project Area | Program of totipotency: From decoding to designing |
Project/Area Number |
20H05374
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 肇伸 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (80403202)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 全能性細胞 / ES細胞 / 脂肪滴 |
Outline of Annual Research Achievements |
ES細胞は、胚盤胞期の将来胚体を形成する内部細胞塊から樹立された細胞であり、胎盤などの胚体外組織への分化能を失った多能性細胞であると信じられてきた。しかし、近年、ES細胞には非常に低い割合で内在性のレトロウイルスであるMuERV-Lを発現する細胞集団(2細胞期様細胞)が存在し、これらの細胞集団は初期の着床前胚に移植した場合に、内部細胞塊だけではなく、栄養外胚葉にも寄与することから、全能性を有すると結論されている (Macfarlan TS et al. Nature 2012)。しかし、これまでの研究から、2細胞期様細胞は全能性細胞を含むヘテロな細胞集団であることが明らかとなっている。そこで、本研究では、1個の細胞が分裂を経て内部細胞塊と栄養外胚葉に寄与できる“真の全能性細胞”を同定・可視化することを目的とした。また、全能性を保持したまま増殖させることができる“全能性幹細胞”を樹立し、細胞の全能性を規定する分子基盤を解明することをもう一つの目的とした。今年度は、我々が開発したES細胞から2細胞期様細胞を効率よく誘導する方法を用いて2細胞期胚を誘導し、MuERV-Lを発現を指標として2細胞期様細胞をセルソーターで分取した。2細胞期様細胞の電子顕微鏡解析から、ES細胞から2細胞期様細胞に変化する際に、ミトコンドリアが形態的に成熟することを明らかにした。また、2細胞期様細胞では、ES細胞には存在せず、全能性を有する卵子に存在する脂肪滴が形成されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、2細胞期様細胞の中に脂肪滴を有する亜集団が存在することを明らかにした。脂肪滴は、全能性を有する初期胚に存在し、ES細胞に存在しないことから、2細胞期様細胞に含まれる「真の全能性細胞」に存在する可能性が高いと考えられる。これまでの研究から2細胞期様細胞は、解糖系ではなく、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化によりエネルギーを得ることがわかっている。一方、全能性を有する初期の着床前胚では脂肪滴から遊離した脂肪酸がミトコンドリアに取り込まれて酸化的リン酸化に使われることも知られいる。以上のことから、本研究課題は「真の全能性細胞」の同定に向けて順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2細胞期様細胞に含まれる脂肪滴を持つ亜集団について、RNA-seqを行い、脂肪滴の有無が遺伝子発現に与える影響について検討を行う。また、2細胞期様細胞に含まれる脂肪滴を持つ細胞1個を桑実胚に移植することにより、胚盤胞期において分裂を経て内部細胞塊と栄養外胚葉の両方に分化できるかどうかを検討する。さらに、ES細胞と2細胞期様細胞においてエネルギー代謝経路が異なるという実験結果に基づき、2細胞期様細胞を安定的に長期培養できる培地の開発を行う。以上の実験から、真の全能性を有する幹細胞を樹立することを目標とする。
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Research Products
(12 results)