2020 Fiscal Year Annual Research Report
Genome-wide identification of distinct target loci for de novo DNA methylation during mammalian development
Publicly Offered Research
Project Area | Mechanisms underlying replication of non-genomic codes that mediate plasticity and robustness for cellular inheritance |
Project/Area Number |
20H05384
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 泰広 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70313872)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、ゲノム情報は正常であるものの大部分のDNAメチル化を消失したマウスES細胞の樹立に成功した(Nature 2017)。本研究提案では、このDNAメチル化消失ES細胞を用いて、Dnmt3aおよびDnmt3b遺伝子を破壊、分化させた後に、網羅的なDNAメチル化解析を行うことで、それぞれの酵素による新規DNAメチル化標的領域の同定を試みる。領域特異的新規DNAメチル化による遺伝子発現制御機構を理解し、多細胞生物の個体発生過程や疾患発症における役割を検討する。最終的には領域特異的新規DNAメチル化機構への介入による効率的な細胞運命制御方法や疾患治療法の開発へ発展させる。2020年度は、【計画1】Dnmt3a遺伝子およびDnmt3b遺伝子欠損DNAメチル化消失ES細胞由来マウス胎仔線維芽細胞の網羅的DNAメチル化解析および【計画2】DNMT3AおよびDNMT3Bの部位特異的新規DNAメチル化部位のエピゲノム解析、DNMT3A/DNMT3B結合解析を中心とした解析を行なった。その結果、DNMT3AとDNMT3Bに特異的なメチル化標的部位を同定することに成功した。 DNMT3Aは個体発生に重要なポリコームによって制御を受ける、分化関連遺伝子にメチル化を誘導することを見出した。一方で、DNMT3BはX染色体遺伝子を特異的にメチル化することを明らかにした。また、DNMT3A、DNMT3BのDNA上への結合能力の違いがDNAメチル化領域の特異性を生み出すことを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mek阻害剤およびGSK阻害剤存在下(2i培地)で樹立したマウス雌ES細胞では大部分のDNAメチル化が消失していることを見出した。このES細胞において新規DNAメチル基転移酵素であるDnmt3a遺伝子およびDnmt3b遺伝子を破壊した後に分化誘導することで、発生過程におけるDNMT3AとDNMT3Bにそれぞれ特異的なメチル化標的部位が同定できると考えた。2i培地で樹立したマウス雌ES細胞から、DNMT3AとDNMT3Bの欠損株を作製した。このES細胞を用いてキメラマウスを作製し、マウス胎仔線維芽細胞を樹立した。次に、樹立したマウス胎仔線維芽細胞のDNAメチル化をWGBSおよびMethylC-seqにより解析した。その結果、Dnmt3a遺伝子欠損細胞では個体発生に重要な分化関連遺伝子のDNAメチル化レベルが低下すること、Dnmt3b遺伝子欠損細胞ではX染色体遺伝子のDNAメチル化レベルが低下することが分かった。DNMT3Aは分化関連遺伝子に、DNMT3BはX染色体遺伝子に特異的にメチル基を付加することを明らかにした。また、ポリコームにより発現制御を受け、個体発生に重要な分化関連遺伝子においてDNMT3Aが特異的に結合することを見出した。DNMT3A、DNMT3BのDNA上への結合能力の違いがそれぞれの領域特異性を生み出すことが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究により、DNMT3Aは分化関連遺伝子に、DNMT3BはX染色体遺伝子に特異的にメチル基を付加することを明らかにした。2021年度は、【計画3】DNMT3AおよびDNMT3Bの領域特異的新規DNAメチル化標的遺伝子の発現解析を行う。具体的には、Dnmt3a遺伝子欠損細胞においてポリコーム標的分化関連遺伝子の発現変化を、Dnmt3b遺伝子欠損細胞ではX染色体遺伝子の発現変化を解析する。また、【計画4】としてDNMT3Aの領域特異的新規DNAメチル化標的遺伝子の個体発生異常、がんなどの疾患発症への関与解明を目指す。特に、DNAメチル化標的遺伝子に着目してDnmt3a欠損マウスの解析を進める。また、DNMT3A遺伝子変異が高頻度に認められる急性骨髄性白血病において、DNMT3Aのメチル化標的遺伝子の発現解析を行う。最終的には、【計画5】領域特異的新規DNAメチル化に関わる遺伝子群への介入による細胞運命制御方法、疾患治療法の開発を目指す。
|