2020 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチン構造と遺伝子発現を接続する一細胞時系列モデリング
Publicly Offered Research
Project Area | Mechanisms underlying replication of non-genomic codes that mediate plasticity and robustness for cellular inheritance |
Project/Area Number |
20H05393
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前原 一満 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (90726431)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | クロマチン / マルチオミクス / 一細胞 / 状態空間モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画では、独自技術であるChIL法によるマルチオミクスデータの取得と、一細胞データの時間構造推定法を組み合わせた遺伝子発現ダイナミクスの時系列解析法を確立することで、クロマチン構成因子と遺伝子発現制御の制御/依存関係の理解することを目指している。具体的には、以下の3つの目標を達成しながら計画を遂行する。まず、一細胞データの時系列解析を行うための基礎技術を確立(目標1)し、取得したマルチオミクスデータ(目標2)から構築する時系列モデルへの適合度を指標として、分化時の遺伝子発現制御システムの駆動に必須となる、モデルの外部としての非ゲノム因子同定を目指す(目標3)ものである。本年度は、一細胞データ時系列モデリングのための基礎的技術の確立を目指した。リード数の大小やサンプリングのばらつき(テクニカルノイズ)の影響を除きつつ、各細胞に内在的な遺伝子発現の活性度合いを示す仮想的な内部状態(発現ポテンシャル)推定法の開発を行った。発現ポテンシャルの推定は、遺伝子発現の滑らかな時間推移を視覚的・直感的に捉える手段にとどまらず、下流の発展的な時系列データ解析法の適用を容易にできると考えている。さらに組織のエピゲノムデータから転写の動態を抽出する手法を開発し、論文投稿を行った。また、マルチオミクスデータ計測法の確立においては、申請者が独自に開発したChIL法を発展させた複数のタンパク質の同時解析手法であるmulti-ChIL法を開発し、論文発表を行った。共同研究では、クロマチン分野にて3報の論文成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
解析手法の開発は順調である。マルチミクス計測法についてはすでに論文発表を行っており、当初計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も引き続き、一細胞マルチオミクスデータの取得を進める。筋損傷後の筋衛星細胞の活性化から、骨格筋の再生に至るプロセスを細胞におけるクロマチンによる遺伝子制御のモデルケースとして用いる。次に、構築した統計モデルの適合度指標により、制御構造の変化や計測対象外の因子による外乱の有無を評価する。オミクスデータより構築した統計モデルから逸脱する遺伝子発現の挙動(変化点)を検出し、ダイナミクスの記述に必要なモデルの外側の要素(例:クロマチン構造変化)の同定を試みる。モデルに含める非ゲノム要素を段階的に増やしながら、逆説的にモデルの外側の因子の必要性を評価するシステムの構築を目指す。
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Research Products
(8 results)