2020 Fiscal Year Annual Research Report
イネ科植物における葉の周期的分化と内部構造の変調機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Intrinsic periodicity of cellular systems and its modulation as the driving force behind plant development |
Project/Area Number |
20H05406
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 純一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (30345186)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イネ / 発生 / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでイネの様々な葉の発生ステージや領域における網羅的な遺伝子発現解析を行ってきたが、本年度はこれまでに取得した遺伝子発現プロファイルデータのデータ解析と、様々なカテゴリーに基づいた遺伝子抽出を行った。発現プロファイルのデータ解析においては、葉の発生段階、場所の異なる12のサンプルを用いた主成分分析を行い、遺伝子発現からそれぞれのサンプルの発生的な位置付けを考察した。その結果、P1・P2の葉原基を含む茎頂部、P3の葉原基全体、P4の葉鞘、P4の葉身基部の4部位、P4の葉身頂部とP5とP6を含む組織の7つ部位が、それぞれ似たトランスクリプトームを示した。一方、P4の葉身中央部はそれらと大きく異なる傾向を示した。さらに詳しく解析したところ、これらのサンプル間のトランスクリプトームの差異は、サンプルの成熟度、組織分化の移行度合い、葉身と葉鞘の違いの3つの要因が影響していることが推測された。また、P4に由来するサンプルはサンプル間でトランスクリプトームが大きく変動していたことから、イネでは葉のP4ステージにおいて、成熟や組織分化に関連したトランスクリプトームのシフトが葉の頂部基部方向に進んでいることが示唆された。 またクラスタリング解析により、共通して特徴的な発現変化を示す遺伝子群のリストを入手した。それらの中から複数の遺伝子を選出し、茎頂付近においてin situ hybridizationを行った。その結果、葉原基の通気組織形成に関連する組織において高い発現を示す遺伝子や、イネ科に特徴的な葉舌に発現する遺伝子などを同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、イネ葉のトランスクリプトームのデータ解析を進め、論文として公表した。さらにその中から、これまで知られていない葉の内部構造の制御過程に関連すると予想される複数の候補遺伝子の抽出に成功したことから、解析は順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子発現プロファイルのデータ解析においては、葉の分化状態、葉身と葉鞘の違いを反映する可能性のある遺伝子群をランク付けして抽出する方法を開発し、複数の遺伝子についてin situ hybridizationによる発現解析を行なっている。今後、CRISPR/Cas9によるこれらの遺伝子の破壊系統を作成することによって、イネ科の葉の組織形成に関わる新奇遺伝子の機能解析を行う予定である。 葉間期の制御機構に関する解析においては、3遺伝子座に由来するオオムギのmnd変異体を用いて、それらの遺伝子間相互作用を明らかにすると共に、詳細な発現解析と表現型解析により、葉間期の遺伝的制御機構についての知見を蓄積していく予定である。
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Research Products
(2 results)