2020 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms of transcriptional regulation underlying periodicity and modulation in cell proliferation during plant development
Publicly Offered Research
Project Area | Intrinsic periodicity of cellular systems and its modulation as the driving force behind plant development |
Project/Area Number |
20H05408
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
伊藤 正樹 金沢大学, 生命理工学系, 教授 (10242851)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞周期 / 細胞分裂 / 転写制御 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
DREAM complexはE2FとMYB3Rを同時に含むタンパク質複合体であり、広範囲の細胞周期遺伝子の転写を制御していることを明らかにしている。(1)ドイツのグループと共同でシロイヌナズナのDREAM complexの生化学的な研究を行い、サブユニット構成をほぼ完全な形で明らかにした。またDREAM構成因子の1つLIN37がDNA損傷により誘導される細胞分裂の抑制に役割を果たしていることを明らかにした。(2)DREAM構成因子の変異体ではG2/M期遺伝子の下方制御が起きないこと、また活性化型MYB3Rの変異により生じる細胞質分裂の異常は、DREAM構成因子の変異を組み合わせても促進されないことから、G2/M期遺伝子の転写活性化は複合体形成に依存しないMYB3Rの働きが関与していると考えられた。 シロイヌナズナのGRAS型転写因子SCL28は、細胞サイズを適切にコントロールするために重要な制御因子であることを明らかにしている。(1)SCL28のChIP-seq解析の結果、CDK阻害タンパク質をコードするSMRファミリーのうち、7遺伝子が直接の標的遺伝子であることが明らかになった。また、SCL28の相互作用因子であるAP2型転写因子AtSMOS1も同じSMR遺伝子に結合していることが分かった。(2)SCL28とAtSMOS1は単独では標的DNAへの結合能力を持たず、標的への結合にはヘテロダイマー形成が必要であることが明らかになった。(3)SCL28とAtSMOS1のChIP-seq解析を行ったところ、結合を示すピークがゲノム全体に渡り高度に一致していた。このような重複したピークの塩基配列の解析から、SCL28-AtSMOS1ヘテロダイマーの結合塩基配列を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DREAM complexは、ショウジョウバエにおいて最初に同定されたタンパク質複合体であり、2015年に私たちの研究により、MYB3RとE2F を含む複合体としてシロイヌナズナから同定した。しかし、その後、詳細な生化学的な実体は明らかにされていなかった。今年度、ドイツのグループとの共同研究により、免疫沈降と質量分析による方法でほぼ完全なサブユニット構成を明らかにすることができた。この研究では、2種類の植物特有のタンパク質を構成サブユニットとして同定しており、これらを用いた今後の研究の展開に期待が持たれる。また、DREAM complexがストレスに応答した成長抑制に関わっていることも、構成因子の変異体を用いて示すことができた。 細胞サイズ制御に関わる転写因子SCL28の標的遺伝子の候補として、CDK阻害タンパク質をコードするSMRファミリーの遺伝子を同定していたが、直接の下流遺伝子であるかどうかは確定していなかった。SCL28-GFP植物を用いたChIP-Seq解析により、ゲノム全体に渡るSCL28のDNA結合状態を明らかにした。その結果、SMRファミリーの7個の遺伝子に結合していること、これら7個の遺伝子はいずれもSCL28過剰発現体で上方制御されることから、7個のSMR遺伝子をSCL28の直接の標的遺伝子ととして確定することができた。さらに、AtSMOS1のゲノム全体における結合部位(ChIPseqピーク)は、SCL28のものと一致していることを示し、このような一致したピークの塩基配列から、SCL28-AtSMOS1ヘテロダイマーの結合塩基配列を明らかにすることができた。GRAS型転写因子の結合配列を明確に示した研究例は少なく、今年度の発見は、今後、GRAS転写因子が標的遺伝子を制御する分子機構一般の理解に繋がる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナにおけるDREAM complexの構成因子をほぼ完全に同定することができた。今後、それらの変異体における表現型やトランスクリプトームの解析を進めて行く必要がある。すでに先行して、いくつかのDREAM構成因子の変異体の取得、多重変異体の作出を進めており、トランスクリプトームのデータも集積してきている。今後、このような変異体の作出とRNA-seqによる遺伝子発現解析を進め、トランスクリプトームの比較を行うことで、各サブニットの働きと、それらが複合体に統合される仕組みについて明らかにしていく。また、複合体における各サブユニットの働きが、異なる標的遺伝子(例えばG1/S期遺伝子とG2/M期遺伝子)の間で同じであるのか、あるいは標的遺伝子によって異なったサブユニットの寄与があるのかなどを明らかにし、多くの構成因子を含む複合体の作用メカニズムの詳細を明らかにしていく予定である。 細胞サイズ制御に重要なSCL28は、CDK阻害タンパク質をコードする複数のSMR遺伝子の上流(あるいは下流)に結合することを明らかにした。ChIP-SeqデータからSMR以外の標的遺伝子についても情報が得られているため、今後、このような遺伝子のなかに細胞サイズへの寄与を持つものが存在するかどうかを明らかにしていく。また、SMR遺伝子をSCL28の直接の標的であることを示したが、SCL28の細胞サイズ制御において機能的に重要な下流遺伝子であるかどうかは、今後、変異を組み合わせる実験などにより検証を進めていく必要がある。
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Research Products
(8 results)