2020 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular movies for protein-ligand association and dissociation
Publicly Offered Research
Project Area | Non-equilibrium-state molecular movies and their applications |
Project/Area Number |
20H05432
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松尾 和哉 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (90764952)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 光制御型リガンド / リガンド結合・解離 / 熱異性化 / 光異性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タンパク質とリガンドが結合する過程や、複合体からそれぞれに解離する過程を、高速分子動画法を用いることで、相互作用の時間変化を詳細に解析することを目指している。 具体的には、標的タンパク質として、キネシン様タンパク質CENP-Eを設定した。標準的なCENP-E阻害剤であるGSK923295を参考に、アリルアゾピラゾール誘導体を導入した光制御型阻害剤は、紫外光(365 nm)照射によるcis体リッチな状態と、可視光(510 nm)照射時のtrans体リッチな状態で、精製CENP-Eに対し、10倍程度のCENP-E阻害活性の差が確認できた。この知見を足がかりに、「熱」と「光」でCENP-E阻害活性を制御できる新たな阻害剤を開発し、CENP-Eとの共結晶を得ることを計画した。さらに、得られた結晶を利用し、CENP-Eと阻害剤(リガンド)とが結合・解離する過程を、熱・光による外部刺激で制御し、高速分子動画法による時分割解析を行う。 研究初年度となる本年度は、コロナ禍の影響もあり、一時期研究活動が停止したが、種々の置換基を有するアゾベンゼン誘導体を、アリルアゾピラゾール部位に導入した新たなCENP-E阻害剤群を設計・合成することで、cis体からtrans体へと変化する熱異性化反応を制御することを試みた。その結果、milli secondやmicro secondなどの極めて短いcis体寿命を有する阻害剤を複数開発することに成功した。これらを利用することで、対応する可視光を持続的に照射した時のみ、cis体が発生し、CENP-Eがactiveな状態になるが、光照射を止めると、発生したcis体は速やかにtrans体へと変化し、CENP-Eが阻害状態となることを、精製CENP-Eを利用したin vitro系および生細胞系において、確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光制御型CENP-E阻害剤の基本骨格に導入するアゾベンゼン誘導体を種々検討することで、熱異性化反応を制御し、cis体の寿命が十分長いリガンド(hour order)やmilli secondやmicro secondなどのorderの寿命を示すリガンドなどを複数開発することに成功した。これらの光と熱で制御できるリガンドを利用し、可視光を持続照射することで、光照射部位でのみCENP-E活性を回復させることで、染色体の動きを自在に光操作できた。したがって、開発した外部刺激制御型阻害剤は、精製系や細胞系で機能することが確認できた。さらに、CENP-E以外の標的タンパク質を設定することで、本手法の拡張性を検討した結果、新しい標的タンパク質の活性を光と熱で制御できる新たなリガンド分子の開発にも成功した。以上の結果から、現在までの進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、当初の予定通り、開発した光と熱で制御できる阻害剤と標的タンパク質との共結晶を作成し、高速分子動画法へと展開することを目指す。まずは、CENP-Eなどの標的タンパク質と光・熱制御型阻害剤との共結晶化を検討する。次に、得られた共結晶を利用して、放射光施設で結晶構造を解き、阻害剤とタンパク質がどのような配置・相互作用となっているのかを解析する。また、共結晶を流路に流しながら、trans体からcis体への異性化反応を引き起こす光を時間調節して照射することで、任意の時間スケール(milli secondからnano second)による挙動を、連続的なX線回折像として取得することで、高速分子動画を得る。これにより、タンパク質と阻害剤との相互作用における動的挙動を明らかにする予定である。
|