2020 Fiscal Year Annual Research Report
(6-4)光回復酵素によるDNA修復過程の分子動画撮影
Publicly Offered Research
Project Area | Non-equilibrium-state molecular movies and their applications |
Project/Area Number |
20H05442
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山元 淳平 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (90571084)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | DNA修復 / DNA損傷 / 光回復酵素 / 構造生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球史の中で長期に渡り生物のゲノム恒常性維持を担ってきた光回復酵素は、フラビンアデニンジヌクレオチドを補酵素として有するフラビンタンパク質のひとつであり、シクロブタンピリミジンダイマーや(6-4)光産物といった変異原性の高い紫外線損傷 DNA を青色光依存的に修復することができる酵素である。申請者は、(6-4)光産物の修復を担う(6-4)光回復酵素のDNA 修復過程は、従来型の光回復酵素による 1 光子反応とは異なり、中間体の形成を伴う逐次的 2 光子反応であることを明らかにした。一方で、中間体の構造が依然として明らかになっておらず、(6-4)光回復酵素によるDNA 修復反応機構はいまだに世界的に議論が続けられている。本研究課題では、時分割シリアルフェムト秒結晶構造解析(TR-SFX)による(6-4)光回復酵素DNA 修復反応前半の分子動画を作成することで、申請者が提唱している(6-4)光回復酵素の逐次的2光子修復反応機構における中間体構造を明らかにする。また、計画班との共同研究により、当該結晶について時間分解過渡UV/VisおよびFTIR測定を行い、上記中間体構造における分光的知見を得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(6-4)光回復酵素の一つであるクラミドモナス由来クリプトクロム(CraCRY)に着目し、そのDNA複合体の共結晶の作成およびSACLAを用いた構造解析を行った。過去に報告されているCraCRY-DNA複合体結晶は再現性が乏しく、また結晶のサイズが大きいため、現状ではCraCRY-DNA複合体を用いたSACLAでの実験は困難であることが考えられていた。さらに、SACLAにおける実験では大量の試料を用いて実験する必要があり、従来のDNA調製法では供給できるDNA量に限りがあった。 本年度は、損傷DNAの合成手法の改善を行った。開発当初のDNA合成機に実装されていた10マイクロモルスケール合成用のプログラムを現在のDNA合成機に適応・最適化することで、損傷DNAの構築ブロックの使用量を半分に抑えることができ、SACLAにおける時分割測定に向けたDNA供給体制が整った。 また、すでに報告されているCraCRY-DNA複合体構造を精査したところ、共結晶作成の再現性の低さは、結晶格子間でDNA末端が入れ子状に接合していることが原因であると考え、DNA末端構造の最適化を行った。その結果、再現性良くCraCRY-DNA複合体を与える配列を決定した。さらなる最適化の結果、複合体微結晶を得ることができた。 調製したCraCRY-DNA複合体微結晶を用いて、SACLAにおける常温無損傷結晶構造解析に供したところ、約2Åの分解能で構造解析を行うことができた。この結晶中のCraCRYは、DNA修復活性を持たない補酵素の酸化還元状態であったため、共結晶を還元剤にて処理してDNA修復活性を持つ還元状態への変換を試みたところ、溶液状態では容易に進行した還元反応は全く進行しないことがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
時分割SFX測定による中間体捕捉のためには、DNA修復活性を有するCraCRYの酸化還元状態にてDNA複合体の結晶を得る必要がある。還元剤を用いた共結晶の直接還元反応が進行しなかったため、還元状態のCraCRYを嫌気状態にて調製し、嫌気条件下にて共結晶作成を試みる。これによって調製した結晶について、2021B期のビームタイムにおいて常温無損傷構造解析および時分割シリアルフェムト秒X線結晶構造解析(TR-SFX)に供する。すでに、中間体の形成反応は40マイクロ秒以上が必要であることがわかっているため、TR-SFX測定では400 nmレーザーポンプ光とXFELの間に100マイクロ秒の遅延時間を設けて測定することで、中間体の形成反応が進行するかどうか検討する。 今回のCraCRYによるDNA修復反応の量子収率は10%以下と非常に低いため、TR-SFXにおける電子密度変化がわずかであると考えられる。CraCRY-DNA共結晶を用いた時分割測定をより効率よく進めるため、集光アンテナ分子である8-ヒドロキシデアザリボフラビン(8-HDF)を保有するCraCRYの調製を並行して試みる。このCraCRY-8-HDFとDNAの三元複合体の結晶作成を、すでにわかっているCraCRY-DNA複合体結晶化条件にて試みる。2021B期のビームタイムまでに結晶化に成功すれば、その時点で常温無損傷構造解析に供する。
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