2020 Fiscal Year Annual Research Report
高速分子動画撮影によるTRPチャネルの熱刺激応答機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Non-equilibrium-state molecular movies and their applications |
Project/Area Number |
20H05445
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
日野 智也 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (40373360)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TRPチャネル / X線結晶構造解析 / 赤外分光 / クライオ電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
TRPチャネルは、環境温度の感知機能を担う陽イオン選択的イオンチャネルである。これまでに、TRPV3が熱刺激を受けたのちの感作状態及び活性化型の立体構造が報告されたが、これらの構造は温度応答性が野生型と大きく異なる変異体を用いて得られたものであり、生理的環境下において起こる構造変化と同一か疑問が残る。加えて、熱感知機構において最も重要な温度センサー部位については情報が得られていない。そこで、本研究ではタンパク質の構造変化を高い時空間分解能で動画化することが可能なシリアルフェムト秒X線結晶構造解析 (SFX) 法に温度ジャンプ法を組み合わせ、熱刺激直後に起こる構造変化を検出することによりTRPチャネルの温度センサー部位の同定を目指す。ついで、この構造変化が生理的環境と類似した脂質膜環境下と同一であるかを赤外分光法により検証する。さらに、温度感知域の異なるTRPチャネルに対しても同様の解析を行い、TRPチャネル間に共通する熱感知機構を抽出する。 今年度は、すでに結晶化に成功しているTRPV3微結晶の大量調製及び、TRPV3とは異なる温度域で活性化するTRPV4の構造解析に取り組んだ。 TRPV3の結晶化時には界面活性剤としてドデシルマルトシド(DDM)を用いていたが、X線回折実験の結果からこれまでに得られた結晶は結晶性が低く構造決定は困難であると予想された。そのため、ミセル間の立体障害を低減し結晶性を向上させることを狙い、DDMよりも小型のミセルを形成するデシルマルトースネオペンチルグリコール(DMNG)への置換を行ない試料を得た。現時点で結晶は得られていないがDDMで作成した結晶を種としたミクロシーディングによる微結晶調製を今後試みる。 TRPV4では、単分散な試料の調製に成功し、クライオ電子顕微鏡単粒子解析によりヘリックス構造が明瞭に識別できる分解能でマップを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TRPV3の試料調製時に用いる界面活性剤の変更が可能なことが分かったが、得られた試料を用いた結晶化に成功していない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の要点はTRPチャネルの結晶性の良い微結晶調製にあるが、現時点では再現性に問題を抱えており、さまざまな条件における結晶性の評価が行えていない。今後は結晶化の再現性を高めるために、まずは従来通りに結晶を作成し、これを種としたシーディング法を確立する。ついで、界面活性剤を置換した試料の結晶化を試みる。また、結晶の分解能向上策として脱水による結晶性向上も試みる。 TRPV4については、高い分解能での構造解析が期待できるクライオ電子顕微鏡でのデータ取得を行い、3Å台の構造解析を目指す。さらに、40℃程度の環境から急速凍結した試料を調製し、温度上昇により活性化した状態での立体構造決定を目指す。
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Research Products
(4 results)