2020 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中患者の上肢麻痺回復過程における超適応機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Hyper-adaptability for overcoming body-brain dysfunction: Integrated empirical and system theoretical approaches |
Project/Area Number |
20H05456
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
出江 紳一 東北大学, 医工学研究科, 教授 (80176239)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳卒中 / 学習性不使用 / 身体意識 / fMRI / リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
脳卒中後の上肢麻痺の回復に麻痺肢の使用頻度を高めることが重要とされている.麻痺が使用を阻害し,臨床上大きな問題である学習性不使用が生じる.近年,身体意識の変容が注目されているが,発症から慢性期までに至る身体特異性注意,上肢使用頻度および脳機能の長期的変容やこれらの間の関係は不明である.そこで本研究では,脳卒中患者を対象とし,上肢使用頻度と身体特異性注意をそれぞれ加速度計と心理物理的手法を用いて縦断的に計測した.また,脳の可塑的な変化をfMRI・DTIを用いて計測し,これらの回復過程における関係の解明を目指した. 2020年度は脳卒中患者30例を登録し,ベースラインから6ヵ月まで計測した25名分のデータを解析した.行動指標に関する縦断的変化について解析した結果,上肢機能は2ヵ月まで改善し,6ヵ月まで維持した.上肢使用頻度と身体特異性注意は1ヵ月まで増加し,6ヵ月までの変化は緩やかだった.身体特異性注意の変化量と上肢使用頻度の変化量との間に正の相関がみられた.また,脳機能画像解析にて麻痺手運動時の脳活動領域の変化を調べた結果,麻痺手運動時の初期にみられた対側半球を含む広範な活動は徐々に手の領域に限局した. 加えて,脳機能画像取得時にDTIも撮像し,脳損傷による皮質脊髄路をはじめとする構造的なネットワークの解析も行った.損傷脳に関するDTI解析については各種議論が行われており,より正確なデータを得るために最適な解析手法の確立を目指した.全脳での白質線維の変化を確認するためにTBSSを行った.また,脳損傷後の回復に重要と考えられる関心領域を用いたROI解析も実施した.現在取得された画像データを用いて概ね仮説を支持する結果を得られているが,より正確な解析手法の確認を継続している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度終了時点で,目標とした脳卒中患者30例を登録し,予定通り定期評価を実施することができた.身体特異性注意(視覚刺激検出課題)・上肢使用頻度(加速度計)などの行動指標や,脳画像(fMRI・DTI)などの解析が必要となるデータに関しても,データが得られ次第,順次解析を行うことができた.脳画像解析では概ね仮説を支持する結果を得ることができているが,損傷脳を対象としているため,より正確な解析手法の確認を継続する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は初年度と同様の評価手続きにて,脳卒中患者30名の1年までのデータを計測予定である.全症例の1年間のデータ取得が完了した時点で,各行動指標と脳画像データの縦断解析を行い,各指標の長期的な変容を検証する.また,行動指標の変化量と脳の機能・構造画像解析で得られた脳の可塑的変化の関係について検証する.
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Research Products
(6 results)