2020 Fiscal Year Annual Research Report
Adaptive mechanism occurring in both hemispheres after unilateral brain damage
Publicly Offered Research
Project Area | Hyper-adaptability for overcoming body-brain dysfunction: Integrated empirical and system theoretical approaches |
Project/Area Number |
20H05490
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
肥後 範行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究グループ長 (80357839)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | リハビリテーション / 脳卒中 / 非ヒト霊長類 / 動物モデル / 神経可塑性 / 脳イメージング / 組織化学 / マカクサル |
Outline of Annual Research Achievements |
マカクモデルを使用して、内包後脚梗塞後のマクロファージ・ミクログリア(MΦ/ MG)の時間的変化を調べた。 MΦ/ MGの一般的なマーカーであるIba1の梗塞周囲領域における免疫反応性は、梗塞後0日から3週間まで徐々に増加し、その増加は少なくとも梗塞後6ヶ月まで続いた。内包梗塞後数週間の時期において、大脳皮質から運動出力を担う下降路が起始する第一次運動野のV層のニューロンの逆行性萎縮または変性が二次的損傷として見られるとともに、Iba1陽性のMΦ/ MGが一時的に増加することを明らかにした。したがって、MΦ/ MG増殖・活性化の時間経過は、梗塞周囲領域と二次的損傷が発生する脳領域の間で異なると考えられる。機能的表現型マーカーCD68、CD86、およびCD206、および各表現型の細胞によって放出されるサイトカインを使用した詳細な解析により、慢性期の梗塞周囲領域と第一次運動野の両方における活性化MΦ/ MGが抗炎症性の役割を有していることが示唆された。さらに脳卒中後疼痛(central post-stroke pain, CPSP)サルモデルを対象に、T1強調磁気共鳴画像法を用いたvoxel-based morphometry(VBM)解析およびシナプス構成タンパクに対する免疫組織化学的染色を行った。片側半球の視床後腹側外側核への脳出血の数週間後、サルは異痛症を反映していると解釈される行動変化を示した。VBMの結果から、脳出血の初期ではなく、数週間後に痛みに関連する領域の灰白質が減少することが示唆された。さらに免疫組織化学的染色の結果、VBM解析により灰白質の最大の減少が示唆された島皮質においてシナプス終末の有意な減少が示された。本結果は、同側半球の後部島皮質のシナプス喪失を含むニューロン形態の進行性変化がCPSPの病因に関与していることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳損傷後にダイナミックな脳神経系の可塑的変化が生じ、失われた脳機能が回復することがある。一方視床を中心とした体性感覚情報の中継領域に脳卒中が発症した後に不適切な可塑的な変化が生じる結果痛みが生じることもある。いわば脳損傷後に生じる“超適応変化”は良い側面と悪い側面を持っている。令和2年度の研究により脳卒中後に生じる脳活動及び神経構造の変化を同定し、以下の2報の国際ジャーナルへの論文公表を行った。これらはいずれも脳損傷後に生じる良い適応と悪い適応を理解するうえで重要な知見を提供する成果であり、リハビリテーション分野への応用が期待できる。 Nagasaka K, Nemoto K, Takashima I, Bando D, Matsuda K, Higo N, Structural plastic changes of cortical gray matter revealed by voxel-based morphometry and histological analyses in a monkey model of central post-stroke pain, Cerebral Cortex, in press Kato J, Y. Murata Y, Takashima I, Higo N, Time- and area-dependent macrophage/microglial responses after focal infarction of the macaque internal capsule. Neuroscience Research, in press
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに研究代表者である肥後と研究分担者である村田が確立したマカクサルを用いた内包脳卒中モデル動物(Muata and Higo, PLOS, ONE 2016)を対象に、脳損傷後に生じる脳活動および解剖学的変化を明らかにする。例えば、視床脳卒中サルモデルを対象に行ったVBMと免疫組織化学染色を組み合わせた解析を内包脳卒中モデルマカクサルに対しても進める。加えて、回復過程で生じる投射レベルの変化を検証する。すなわち脳卒中に活動変化が認められた機能代償領域に、解剖学トレーサーであるBiotynilated Dextran Amine(BDA)を注入し、1ヶ月程度経過して終末に至った時にその分布を観察する。BDA陽性軸索の解析を、脳損傷を受けていない健常個体と内包梗塞個体の間で比較し、後者のみに存在する投射経路(=脳機能回復過程で新たに形成される経路)を同定する。とくに損傷と対側半球で機能代償が生じた個体に対して、同側手の運動出力を担う投射経路に注目して解析する。これらの研究を通じて、脳損傷後に生じるダイナミックな適応的、および不適応的可塑的変化を解明する。
|