2020 Fiscal Year Annual Research Report
病原菌の鉄獲得プロセスの最上流で機能する膜孔形成毒素の分子機構の活写
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated Biometal Science: Research to Explore Dynamics of Metals in Cellular System |
Project/Area Number |
20H05492
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
横山 武司 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20719447)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生命金属科学 / 膜孔形成毒素 / 黄色ブドウ球菌 / 透過型電子顕微鏡 / 単粒子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、黄色ブドウ球菌の膜孔形成毒素に着目し、膜孔形成能と細胞選択性に対する知見を得るため、一成分性及び二成分性毒素の各ドメインを入れ替えた変異体を作成した。機能解析と透過型電子顕微鏡を用いた構造解析で、膜孔形成毒素の構造機能相関を明らかにすることを目的として研究を進めた。ドメイン入れ替えの対象として、一成分で7量体を形成し、ウサギ赤血球選択性を強く示すαヘモリジンと、二成分で8量体を形成し、ウサギ及びヒト赤血球選択性を示すγヘモリジンを用いた。今年度は特に、多量体化に関わるCap、Rimドメインをαヘモリジン由来とし、膜孔を構成するStemドメインを二成分性毒素であるγヘモリジン由来の変異体を作成し、機能解析を行った。その結果、興味深いことにγヘモリジンを形成するLukF由来のステムを持つ変異体で、ウサギ赤血球への溶血活性を示した。生化学的に多量体化を起こすことが可能かどうかを検証する実験系(多量体化を促進するMPDを添加する)を用いてこの変異体を解析したところ、多量体化が問題なく行われていることが明らかになった。一方類似の変異体においては、多量体化は見られるものの溶血活性を示さないものも取得された。そこで、この多量体化したキメラヘモリジンAF3(Cap, Rimがαヘモリジン由来、StemがLukF由来)を酢酸ウランで染色し、大量の粒子像を透過型電子顕微鏡を用いてデータ取得し、画像処理プログラムRelionを用いて単粒子解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
取得した構造の観察により、作成した変異体は7量体であり、膜孔を構成するStemも正しく形成されていることが明らかになった。このことから、LukF由来のStemドメインは本来相方のHgl2と対になってStemを形成するが、LukF単独でも機能するStemを形成することが可能であることが明らかになった。さらに、同じ組み合わせのキメラタンパク質のうち、triangle regionがγヘモリジン由来のものは、溶血活性を示さないことが明らかになった。このことから、αヘモリジンのCap、Rim、triangle regionまでが一つの機能ドメインとして必要であり、その後Stemを形成する部分はLukF由来でも機能を持つことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、さらに取得したもののうち機能を持たない変異体についても構造解析を行い、ヘモリジンの構造機能相関を探求して行きたいと考えている。また、新学術領域内で領域内共同研究を2件行っている、来年度はクライオ電子顕微鏡を用いた構造解析を積極的に推進していく予定である。
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Research Products
(1 results)