2020 Fiscal Year Annual Research Report
Nutrient Immunityに対抗する細菌の金属輸送系の進化と機能解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated Biometal Science: Research to Explore Dynamics of Metals in Cellular System |
Project/Area Number |
20H05504
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 一路 京都大学, 医学研究科, 教授 (70294113)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | A群連鎖球菌 / 金属輸送系 / AdcA / 亜鉛 / マンガン / 鉄 |
Outline of Annual Research Achievements |
A群連鎖球菌において、亜鉛の取り込み系として考えられるAdcAホモログ(SPs1389)、亜鉛の排出系として考えられるCzcDホモログ(SPs1283)FieFオルソログ(SPs1103)などが存在する。これらのトランスポーターをターゲットとし、その遺伝的な背景と機能について解析を行った。NCBIのnrデータベースを用いてこれらの遺伝子からそのアミノ酸配列を取得し、Protein BLASTにおいて、Expect threshold(E value)0.00001、Query coverが80~100%、Identityが30~100%で10000 件をピックアップした。さらにInterProScanで検索し、ドメインサーチによってFilteringをした。そして、すべての配列をmafftにてアライメントし、その後Cd-hitによってクラスタリングを行った。まず、SPs1103については、ピックアップされたホモログは1563種であったが、そのほとんどは、Streptococcus属、Lactococcus属であった。同様に、SPs1389(AdcAホモログ)はグラム陽性菌の近縁種に、またSPs1283(Czsホモログ)はStreptococcus属にのみ保存されていた。これらの系統解析の結果から、A群レンサ球菌における金属輸送系は、レンサ球菌属に種分化した後に、極めて独自に進化したことが明らかとなった。上記の輸送系については、これまでの近縁種の解析から、亜鉛の獲得・排出に関わっている可能性が高いことが示唆されている。そこで、これらの遺伝子破壊株を作成し、その機能解析を行った。遺伝子破壊株の作成は比較的作成が困難であったが、培養条件の検討を行った結果、遺伝子破壊株を獲得することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトなどの生物を宿主とする細菌の多くは、生育だけでなく病原性の発揮において金属の存在が重要であり、特に病原性の発現の鍵となる「病原性遺伝子の発現誘導機構」には鉄、亜鉛、マンガンといった金属元素が必須であることが知られている。しかし、ヒトなどの生体内では、細菌に必須な金属の獲得を阻害するnutrient immunityと呼ばれる機構が存在し、生体内に存在する金属イオンを減少させることで細菌の増殖を制御している。病原性細菌が生体内で病原性を発揮するために、宿主の細胞性免疫や獲得免疫から回避するだけでなく、このようなnutrient immunityからも回避するため、独自に高親和性の金属輸送系を進化させてきたことを示唆している。しかし、本研究で対象としているA群レンサ球菌では、病原性の発現に鉄・亜鉛が必須であることが報告されているものの、その輸送系についてはほとんど明らかとされていない。本研究で、病原性を発揮するためのシステムの全貌を解明する目的で、その進化的な側面を明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
A群レンサ球菌は、独自に進化した鉄獲得系として、ヘム鉄の獲得機構としてShr系、鉄イオンの獲得系としてMts系、シデロフォアの獲得系としてFts系があると考えられてきた。これまでA02-2津本班と共同で、これらの鉄獲得系についての機能解析・阻害剤開発を行ってきた。本研究では金属イオンを取り込むMts系についての解析を行った。Mts系は、MtsABCからなるトランスポーターであり、この遺伝子の変異は増殖阻害がかかることが報告されている。そこで、このうち金属イオンと結合すると考えられるMtsAについて、その作用阻害剤の取得を目指した。中川研ではScFVを取得し、それぞれの抗体結合部位についての解析を行った。得られた抗体は、それぞれITC上ではMn2+の結合を極めて強く阻害することが示唆されたが、これらの抗体では菌の増殖阻害活性は認められなかった。現在、MtsAに対する低分子化合物による増殖阻害効果を検討している。
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Research Products
(15 results)