2020 Fiscal Year Annual Research Report
エストロゲンとマンガン動態との関連に着目したマンガン神経毒性性差発現機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated Biometal Science: Research to Explore Dynamics of Metals in Cellular System |
Project/Area Number |
20H05510
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石原 康宏 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 准教授 (80435073)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マンガン / 神経毒性 / 性差 / エストロゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はマンガン神経毒性の性差について、エストロゲンにより制御されるトランスポーターに着目して研究を進める。雄性および雌性ICRマウスに10mg/kg/dayの用量で塩化マンガンを飲水投与した。投与2週間後において、シリンダー試験によりオスでのみ多動性(Hyperactivity)が観察された。また、投与10週間後においてローターロッド試験を行ったところ、ロッド上の滞在時間がオスにおいて有意に低下した。このとき、前肢の握力も測定したが、マンガン曝露したオスで低下傾向であった。以上より、マンガン曝露により運動機能が低下することが明らかとなった。 マンガンを10週間曝露したマウスの血液中マンガン濃度は、オス:20.0±4.3 ng/mL、メス:18.3±4.3 ng/mLであった。一方、コントロールマウスの血液中マンガン濃度は、オス:6.1±1.3 ng/mL、7.3±1.3 ng/mLであり、10週間のマンガン曝露により血液中マンガン濃度は約3倍に増加した。現在、脳内のマンガン蓄積について調べている。 雄性マウス、雌性マウス、精巣除去マウスおよび卵巣除去マウスについて、脳内エストラジオール濃度を測定した。線条体において、メスと比較してオスの方がエストラジオール濃度は約3倍高く、精巣除去や卵巣除去により脳内エストラジオール量は大きく低下した。従って、オスの脳内エストラジオールは精巣のテストステロンに、メスの脳内エストラジオールは卵巣のエストラジオールに由来することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 塩化マンガンを飲水投与した際、10週間の長期投与によりオスにおいてのみ運動機能の低下が認められ、マンガンによる神経障害の性差を検出できている。 2. マンガン投与時の生体内マンガン濃度測定を進めており、血液中の測定はすでにおえ、脳での評価に移っている。Manganese-Enhanced MRIにより、オスの脳でマンガンシグナルが亢進する傾向を得ている。 3. 雄性マウス、雌性マウス、精巣除去マウスおよび卵巣除去マウスにおける脳内エストロゲン量を定量し、線条体において、メスよりもオスの方がエストロゲン量は多いこと、精巣除去により脳内エストロゲンが大きく減少することを明らかにしている。 以上より、研究の土台となるデータが順調に得られているため、『概ね順調に進展している』と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、脳内エストラジオール量とマンガン量、運動機能障害には正の相関があることが示唆されている。精巣除去マウスやレトロゾール投与によりエストロゲン合成を阻害したマウスを用いて行動実験やマンガン測定を行い、脳内エストロゲンとマンガン毒性との相関を示す。 エストロゲンはZIP8やZIP14など、様々なマンガン輸送体を制御するため、エストロゲンにより制御されるマンガン輸送体の同定を目指す。現在、エストロゲンにより発現が変化するマンガン輸送体候補を3つ同定しており、さらに絞り込みを進める予定である。
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