2020 Fiscal Year Annual Research Report
回転拡散測定による細胞内転写因子の情報伝達特性の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Information physics of living matters |
Project/Area Number |
20H05522
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金城 政孝 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (70177971)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 蛍光測定 / 細胞内情報伝達 / 拡散運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内シグナル伝達系には2量体化して活性化するタンパク質が多く存在し,生物における普遍的な現象と言える。一方で,細胞質内や核内での拡散運動性としては分子量が増加することで低下し,微細構造や核膜孔を通過するにも不利となる。このように,2量体化形成は細胞内の拡散運動性と,活性の指標としてはそれぞれ相反する状態を示している。このような一見矛盾する事象の中に,シグナル伝達経路における生命現象の特性があると捉えた。本申請では,生細胞内のタンパク質2量体量を定量的に測定する測定系を構築することを目指した。 2量体形成を生細胞内での拡散運動から捉えることは可能であるが,いわゆる細胞内分子クラウディング効果の影響を考慮しつつ拡散状態の解析を行う必要がある。その解決ために,申請者は通常の蛍光相関分光法(FCS/FCCS)測定で得られる並進拡散測定だけでなく回転拡散測定に注目した。FCS/FCCSで得られる並進拡散定数(DT)は球体分子場合,その半径に比例し分子量サイズは鈍感であるが,一方で回転拡散定数(DR)は分子量サイズ(M)に直接比例し,単量体と2量体の変化に敏感であることが期待できる。まずそのために生細胞測定を対象とした回転拡散測定が可能な偏光蛍光相関装置の構築を目指した。まず既設のPol-FCS装置を利用し,生細胞測定用の倒立型顕微鏡上に構築し直す。縦成分,横成分偏光それぞれの検出器のノイズを消し去って検出するように構築した。 また一方でFCS/FCCS測定の大きな弱点は,レーザー光の焦点領域一点における測定であり,2次元可視化表現ができない。この弱点はPol-FCSでも同じである。その克服のために,新規「分子数・輝度分布解析法(N&B)をもちいてParticle Brightness Mapによりタンパク質2量体の定量的イメージング法の確立を目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子クラウディング効果の影響を比較するために溶媒中(PBSや純水)の並進ならびに回転拡散時間で各種クラウダ―材料内での拡散時間を割った値である相対並進拡散時間(TD)と相対回転拡散時間(TR)が利用できるか検討した。すなわち,均一なショ糖溶液中などでは回転拡散時間と並進拡散時間のどちらも粘度に比例するため、溶質の濃度に関係なくそれぞれの比,R=TR/TDは1に近い値を取ると想定した。一方で、PEG6000やFicol,BSAなどの種々のMMC溶液中では回転拡散よりも並進拡散の方が阻害されることから、溶質の濃度に依存してRは1よりも小さくなる結果が得られ実証できた。またその変化率は,種々のクラウダ―の種類により特徴的な値があることが分かった。 N&B法のついては,従来法と同様にモーメント法(MoM)に基づきながらもデットタイムによる推定バイアスの低減が可能なTwo Detector-N&B(TD-N&B)について検討した。TD-N&Bは1色の蛍光を2つの光検出器により同時測定し、2つの蛍光信号の共分散を推定することで実現できる。緑色蛍光タンパク質(Enhanced Green Fluorescent Protein; EGFP)の溶液を用いた実験によって、その効果を実証した。 また,TD-N&Bの取得データ解析においては,通常のモーメント法MoMに加えて最尤推定法(MaximumLikelihood;ML)に基づきながら解析を行い,従来法では2次のモーメントまでしか推定に利用しないが、最尤推定では高次のモーメントも活用されるため、推定精度の向上となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後,細胞測定を重点とするために,検出装置の安定化のため,小型光電子増倍管(PMT)2台を利用して,偏光ビームスプリッター(polarizing beamsplitter, PBS)からの光シグナルと直接検出するように最適化を行う予定。そのためにPMTまたは固体素子であるMMPC(Multi-Pixel Photon Counter)との比較検討を行う。 また,細胞周期,培養細胞株の違いによる比較を行うことで,細胞内微環境の変化が回転,並びに並進拡散速度への影響を明らかにする。 パラメーター推定について経験ベイズ法Empirical Bayes Method; EBと事後最大確率Maximum a Posteriori; MAP並びに推定を採用したEB MAP N&Bについて検討する。前述のML N&BではまれにParticle NumberとParticle Brightnessの推定値はそれぞれ無限大と0になってしまう。これは数値を1つに決定できない場合に生じ、画像の時系列情報がパラメーター推定のためには不足していることが示唆される。このため、経験ベイズ法を用いて画像の空間情報を活用する手法の開発を行う予定。本手法の統計モデルでは、隣り合うピクセル同士のパラメーターは似通った値になると仮定することで可能となる。何故なら,ライブセルイメージではPSFの原理において,ボケが発生するため妥当であると考える。
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Research Products
(7 results)