2020 Fiscal Year Annual Research Report
多機能を実現する細胞ネットワークの情報処理特性
Publicly Offered Research
Project Area | Information physics of living matters |
Project/Area Number |
20H05525
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷本 拓 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70714955)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳神経系は外界の情報を処理するために、外部入力に応じてその情報出力を可塑的に変化させる機能を持つ。ショウジョウバエのキノコ体という脳構造は、同一の匂い情報に対して、相反する行動を誘起する報酬・忌避記憶を形成する。この適応的な行動変化は、記憶の獲得・保持・読み出しの素過程に区別できるが、二つの情動記憶の全ての素過程はキノコ体で処理されることが知られている。 本研究では、キノコ体の神経細胞集団がどのように異なる状況に応じた入力情報を処理しているのか、構造と機能の両面から明らかにする。相反する記憶の各素過程におけるキノコ体出力の状態変化の法則を解析し、キノコ体神経回路の情報処理特性の理解を目指す。 今年度は、情動記憶の各素過程におけるキノコ体の各出力神経の必要性を定量した。具体的には、全てのキノコ体出力神経細胞種について、その神経伝達を各素過程特異的に阻害し、嗅覚連合記憶に基づいた行動出力(匂い選択・匂い源定位)を測定した。この学習スコアを基に、各出力神経の記憶に対する阻害効果から各素過程における貢献度(必要性)を定量することで、報酬・忌避記憶の獲得・保持・行動発現でのキノコ体の機能動態変化を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標をおおむね達成し、着実に研究成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
同一脳画像上に全ての出力神経をマップした「キノコ体出力回路図」を作成し、各神経細胞の入出力部位の分布、神経伝達物質などの情報を統合する。また、情動記憶発現の機能コードを出力神経の構造的特徴と統合して解釈することを試みる。
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