2020 Fiscal Year Annual Research Report
統計力学的手法を用いた血管内皮細胞集団の血管形成メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Information physics of living matters |
Project/Area Number |
20H05527
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田久保 直子 東京大学, アイソトープ総合センター, 特任助教 (60447315)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 血管新生 / 細胞動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、血管新生における血管内皮細胞動態定量解析を行い、不均一な内皮細胞動態(セルミキシング)を示す細胞集団が統合された機能体である血管を形成するメカニズムを明らかにすることを目的とした。具体的には、in vitro血管新生モデルを用いて血管構造全体での1細胞レベルでの内皮細胞動態定量観察を行い、セルミキシングを示す細胞動態の時空間的特性を見出す。 これまでに、マウス大動脈組織片を用いたin vitro血管新生モデル(大動脈リングアッセイ)において、内皮細胞が血管伸長方向に進行後、方向転換して新生血管部根元まで逆走する興味深い細胞往復運動(Uターン動態)を発見した。( N. Takubo, et. al. Sci. Rep. 9, 9304 (2019))。 本研究では、大動脈リングアッセイに加え、他の血管細胞からの動態への影響が無い内皮細胞固有の動態を観察するために、培養内皮細胞のみから構成されるin vitro 2次元血管新生モデルも作製した。本モデルでもUターン動態を含む不均一な内皮細胞動態が観測された。細胞供給源である細胞外基質外の細胞群から血管が新生する様子を定量解析するために、細胞外基質の形状をコントロールするためにジメチルポリシロキサン(PDMS)培養チャンバーの作製を検討した(同新学術研究領域の東大理竹内グループとの共同研究)。細胞配向の解析を行った結果、細胞外基質外の内皮細胞供給源において細胞集団のマクロスコピックな流れが存在することが確認された。 本研究のこれまでの内容について光塾2020および京都大学MACSセミナーにおいて招待講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で領域会議等の活動開始時期が遅れたものの、今年度後期には新学術領域内グループとの共同研究を開始することができた。また、領域内メンバーから招待され、研究代表者がこれまでに発見した血管新生におけるUターン動態および今年度の実験結果について、光塾2020および京都大学MACSセミナーにおいて講演を行った。以上のように、コロナ禍でオンラインが中心ではあったが、領域内で有意義なコラボレーションを行うことができた。一方で、コロナ禍による出勤制限のため、実験は予定通り遂行することが困難であった。本研究で主に用いる予定であったマウス大動脈リングアッセイの作製が困難であったため、維持が比較的簡便な培養内皮細胞を用いたin vitro血管新生モデルを扱った。このモデルでは細胞外基質外の細胞動態観察も容易であるため、細胞外基質外の細胞動態の解析も行い、細胞集団のマクロスコピックな流れの存在など新しい知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、in vitro血管新生モデルとしてマウス大動脈組織片剥離モデルに加えて培養内皮細胞を用いたsprout assayを用い、血管新生における内皮細胞動態イメージングを行う。血管樹状構造と細胞配向や細胞動態の関係を画像解析から定量的に明らかにする。また、集団内皮細胞動態の統計力学的解析を行い、血管樹状構造形成メカニズムを考察する。 具体的には、血管新生における内皮細胞の動態特性および血管樹状構造を定量的に明らかにするために、PDMS培養チャンバーを用いたsprout assayを作製する。本研究では、PDMSチャンバーを用いて細胞外基質の形状をコントロールすることで、血管形状や内皮細胞動態の定量解析を行う。PDMSチャンバーの作製は新学術研究領域内の共同研究にて行う。 次に、血管新生におけるマクロスコピックな内皮細胞動態を定量的に明らかにするために、MS-1 sprout assayにおける単一細胞ライブイメージングを行う。共焦点顕微鏡を用い、SYTO-16を用いて蛍光染色した内皮細胞核を1細胞毎に観察する。細胞外基質外において血管構造を形成しない細胞群の動態にも着目し、系全体の長時間(72時間)撮影を行う。系全体の各細胞の位置の時間変化や細胞配向、血管樹状構造を画像解析により定量化する。 さらに、マウス大動脈組織片剥離モデルおよび培養内皮細胞を用いたsprout assayでの定量解析結果を統合し、血管新生における集団細胞動態の統計力学的解析を行う。自由エネルギーが最小となる細胞配列の経時変化をシミュレーションし、細胞動態を秩序変数として定義した血管樹状構造の安定状態を記述する。また、細胞集団と細胞外基質の力学的相互作用に着目し、血管樹状構造形成メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(1 results)