2020 Fiscal Year Annual Research Report
実験生態系を用いた生態系変化の情報物理学的理解
Publicly Offered Research
Project Area | Information physics of living matters |
Project/Area Number |
20H05533
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
細田 一史 大阪大学, 国際共創大学院学位プログラム推進機構, 招へい研究員 (30515565)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生態系変化 / 生態系情報 / 実験生態系 / 微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微生物による実験生態系を用いて、情報物理学の観点から巨視的および微視的な理解を目指す。具体的には全体として下記4項目を行い、まとめる。(1)様々な実験生態系の実施:20種程度の微生物を用いて様々な組み合わせによる生態系をつくり観察する。(2)個体群動態モデルでの実験結果の解析:実験生態系のダイナミクスを、個体群動態の数理モデルを用いて明らかにする。(3)生態系内の種間相互作用の因果解析:各種の個体数変化から因果解析を行い、情報を用いた手法が何を捉えているか明らかにする。また生態系内の情報伝達の解釈を行う。(4)生態系変化の巨視的な解析:実験生態系の変化を少数自由度で記述する方法を探索する。また閉じた系に光を当てるだけで持続可能な生態系が可能な条件を探る。このうち、2020年度には(1)~(2)について、以下のような結果を得た。 (1) 様々な実験生態系の実施:12種の生物の様々な組み合わせの系を実験した。単種、2種、12種に関しては、初期密度が10倍異なる2通りを試した。これらそれぞれに関し、密閉を続けたものと、2週間に一度だけ系を開けて培地にて10倍希釈したものを実験した。それぞれ、蛍光プレートリーダーに加え、新しく開発した顕微鏡画像の機械学習による生物種同定法を用いて個体群の測定を行った。結果として、全通りの2種生物の組み合わせの経時変化を含め、様々な生態系の時系列データを得た。 (2) 個体群動態モデルでの実験結果の解析:各種生物の栄養の授受や、捕食被食関係などを、多種のMonod型モデルとして表し、実験結果に合うパラメタを同定した。ただし、単純なモデルだけでは説明できなかったため、離散性による確率的挙動や、進化などを加えたモデルを作成した。結果として、様々な生態系の結果を一度に説明する数理モデルを構築できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書の通りの結果を得ているため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、研究実績の概要にある(3)~(4)について、以下のように研究を推進し、まとめる。 (3) 生態系内の種間相互作用の因果解析:2020年度に引き続き、各生物種個体群の時系列データに埋め込まれる情報を用いた種間相互作用の因果解析(CCM)を行う。またこの他、移動エントロピー、Granger因果、Non-Parametric Multiplicative Regressionによる因果解析など、複数の手法を用いて、種間相互作用の因果関係を推定する。これら情報を用いた解析手法が上記(2)の理解と比較して何を表しているかを明らかにする。また、これにより生態系内の種間相互作用による情報伝達の解釈を行う。 (4) 生態系変化の巨視的な解析:2020年度の実験により、実験生態系内の詳細情報(例えば各種の個体数など)を無視しても、異なる生態系の混合などがある程度は少数次元の状態空間内のポテンシャルによって説明できそうな結果が得られている。また一方で、生物は構成要素としては高次元であっても、実際にその挙動は少数次元で記述できることが理論的に知られている。よって、この理論をもとに、得られた結果を解析し、生態系変化の巨視的な記述に試みる。
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Research Products
(8 results)