2020 Fiscal Year Annual Research Report
歩行型分子モーターの変異体散逸計測と情報の視点を導入した数理モデル構築
Publicly Offered Research
Project Area | Information physics of living matters |
Project/Area Number |
20H05535
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
有賀 隆行 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授(特命) (30452262)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生体分子モーター / エネルギー変換 / 1分子計測・操作 / 非平衡物理学 / 生物物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
「生体分子モーターは、ゆらぎを利用して働く効率の良いモーターである」とはよく言われているが、実際に生体分子モーターが「ゆらぎを利用」することによって、「効率の良い」機能を発揮していることを、統合的に実証するまでには至っていない。本研究では、独自に開発した高速フィードバック制御を備えた光ピンセット装置を用いて、ゆらぎの整流作用に影響を与えることが示唆されている変異体キネシンの散逸を計測する。そして、「情報物理学」の視点を導入した数理モデルを構築し検証することを通じて、生体分子モーターのエネルギー変換におけるゆらぎの利用が、その変換効率にどう作用しているのかの理解を目指すものである。 本年度は、数理モデルのパラメータ取得に必要となる蛍光1分子計測系の立ち上げを行った。sCMOSカメラの導入によりまずは単純な蛍光一分子が計測できることを確認した。また並行して行っている野生型キネシンに大きな外力ゆらぎを与えた時の応答計測について、プレプリントとして纏めて公開した。情報の視点を導入した数理モデルの前段階として、局所詳細つりあいを導入することで熱力学的な要請と実験的知見を同時に満たす数理モデルを構築し、野生型キネシンにおける外力ゆらぎ応答の実験結果を数値シミュレーションで検証した。その結果、極端に強い外力条件下では空回りのような事象が起こることが判明し、数理モデルのさらなる改良の必要性が明らかになった。 今後は同様の実験を変異体に拡張し、その結果の解釈に情報の視点も盛り込むことで、ゆらぎと運動効率の関係を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゆらぎと運動効率の関係についてまずは野生型キネシンを用いて有益な知見が得られている。標題となっている変異体計測については今後の課題となっているが、実験系が概ね確立し、サンプルを取り替えるだけであるため、順調に進むと予想される。よって概ね順調に進んでいるとの評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
概要に述べたとおり、本年度までは野生型キネシンを利用して、外環境のゆらぎと運動の関係をあきらかにしてきた。今後は同様の計測・モデル系を変異体キネシンに適用し、外環境のゆらぎと変換効率の関係を明らかにしていく。また、現在立ち上げている蛍光一分子計測系を更に改良し、金コロなどを用いた無負荷下でのモデルパラメータの取得を目指す。
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