2020 Fiscal Year Annual Research Report
AIの法的主体性
Publicly Offered Research
Project Area | Studies on intelligent systems for dialogue toward the human-machine symbiotic society |
Project/Area Number |
20H05570
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
加藤 隆之 東洋大学, 法学部, 教授 (00364331)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | AI / トランスヒューマン |
Outline of Annual Research Achievements |
AIの法的主体性について概観する、「AI、自律性、法人格―序章的考察」法学新報にを執筆した。 また、『AIと法(1)─AIによる人間製造の可能性』と題する論文を白門に執筆した。これは、AI技術に関する現在における最先端の理論を整理し、その状況を冷静に見極めようとしたものである。 人間や人間を超えるトランスヒューマンの完成に関しては、その実現を確実視、自明視するかのような浮ついた言説も多くみられる。我々社会科学系の研究者がその妥当性を評価することは容易でないが、法学系の研究者の中にも、トランスヒューマンであふれる社会の実現を前提に、その危険性を不必要にあおり、法改正や新たな法制度の制定を求めている者がいる。そのため、この点を一度整理し、冷静に分析する必要性を感じていた。 科学者や技術者の間では、トランスヒューマンの実現を肯定する学説、否定する学説、分からないという学説に(wait and see)、大きく3分されているようである。第一線の科学者でさえ意見が分かれている状況を冷静にとらえるべきであり、むしろ、可能性は低いが、将来的には分からないというのが科学者として正しい態度であるという見解に説得力を感じている。 とりわけ、 Susan Schneider教授のArtificial Youという著作には納得できるところが多かった。彼女は、意識の問題は、科学者の間でも全く解明されていないということを主たる根拠として、人間やトランスヒューマンの実現には、原則的に懐疑的である。しかし、科学技術の進歩では、これまでも起きないだろうということが起きてきたという事実から、将来のことは、Wait and Seeという立場を堅持している。 私見では、将来的に実現可能性の低いことに対して、懸念をあおり、法規制を検討することについて疑義を呈している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの影響により、研究の進行が遅れ、2年間連続して、繰り上げさせていただくことになってしまったが、少しずつ状況が好転し、今年度で研究も追いつくようになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回の論稿を皮切りとして、今後、AIに関する主要な論点について、これまでの研究の集大成としてまとめていく予定である。 また、この分野では、海外の動向を把握することも重要であるので、2022年度に引き続き、海外の学会や研究会に出席する予定である。さらに、自己の見解の妥当性を検証するため、日本や海外での学会や研究会で発表する予定である。
|