2020 Fiscal Year Annual Research Report
生態系構成因子としての”ウイルス”を独自技術で捉える
Publicly Offered Research
Project Area | Post-Koch Ecology: The next-era microbial ecology that elucidates the super-terrestrial organism system |
Project/Area Number |
20H05579
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
浦山 俊一 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50736220)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | RNAウイルス / dsRNA / 糸状菌 / 生態 / ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微生物内に潜む、これまで生態系構成要素として解析されてこなかったRNAウイルスの生態中での動態を把握することで、これら共存型RNAウイルスが有する実環境中での機能の理解を目指している。初年度の取り組みとして、研究実施計画に則り①対象圃場の土壌試料からのRNA抽出方法確立、②ssRNA/dsRNAシーケンス情報の取得と解析、③当該試料からの糸状菌単離と内包されるウイルスの同定、を実施した。 ①に関して、定法に則り対象黒ボク土からRNA抽出を試みたが、激しい黒ボク土へのRNAの吸着によりRNAが取得できなかった。そこで、所属ラボで他の土壌試料に最適化した抽出プロトコルを適用し、さらなるチューニングを行うことで、微量ながらも解析可能なRNAを取得する手法を確立した。同期間中に改良した独自のRNAウイルス検出技術を用いたdsRNA-seqとtotal ssRNA-seqを実施し(②)、肥料の有無により内包されるRNAウイルス糞の多様性が異なるものの、主要なRNAウイルスは共通していることが明らかとなった。本結果は、肥料の有無が、土壌が内包するRNAウイルス糞に対してどのような影響を与えるのかについて示した初めてのデータであると言える。また、本研究課題において最も重要なデータを取得する技術群が整ったことで、共存型ウイルスの機能解析に向けた実験工程を構想可能となった。③に関しては200株を超える糸状菌単離株を取得し、その大部分について上記独自技術によるRNAウイルス探索を実施、10種程度の新規ウイルスを同定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ渦の影響により実験の開始が遅れ、必要なキットが入手できないなどの遅延要素が多かったが、概ね研究計画で目標とした技術開発や実試料でのテスト解析を終えることができた。本研究のカギとなるdsRNA解析については、RNA抽出が困難と言われる黒ボク土を対象としても何とか実施できることを確認した。手法の有効性確認のために並行して実施した、森林土壌を対象とした解析では十分な核酸量を得られたことから、当該手法は今後様々な土壌試料にも適用できる可能性が高い。単離糸状菌株からのRNAウイルス探索についても、独自手法の運用方法を見直すことで、当初計画時よりも数倍早く実施できている。バイオトロン内で土壌を維持する試みについて、圃場試料を用いての試験は今年度ほとんど取り組むことができなかった。しかし、ウイルスの機能解析を行う上で重要なデータが得られつつあることから、総合的に勘案して「おおむね順調に進展している。」と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、季節変動を通してRNAウイルス(特に分離した糸状菌に含まれるRNAウイルス)がその宿主と共にどのような挙動を示すのかを明らかにすることを目指す。初年度に取得したテストデータを基に、必要なシーケンシングデータ取得量や指標の組合せを決定する。ラボ環境を利用した、環境中のウイルス・宿主挙動の再現に関しては上記解析結果の検証と位置付ける。
|