2020 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of interaction network of environmental microorganisms by high-throughput laboratory evolution.
Publicly Offered Research
Project Area | Post-Koch Ecology: The next-era microbial ecology that elucidates the super-terrestrial organism system |
Project/Area Number |
20H05591
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前田 智也 北海道大学, 農学研究院, 助教 (10754252)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロバイオーム / 共生 / 進化実験 / 環境微生物 / 微生物相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然界では、数多くの微生物種が共存しており、栄養や生息地の競合だけでなく、基質の分解や、代謝物の交換等、複雑な微生物相互作用を基とした共生関係が築かれている。そのため、このような微生物相互作用を明らかにすることは、マイクロバイオームにおける各微生物の役割や、存在割合の動態が何よって影響を受けているのかを理解する上で大変重要である。しかしながら、マイクロバイオームを構成する数百~数千種にも上る微生物種における相互作用を発見することはとても困難である。また、環境微生物の多くは、その生育に共生パートナーを必要とする場合があり、純粋培養による生態の解析が難しい種も多い。そこで本研究では、様々な環境下においてマイクロバイオームを継代培養し、共存状態を維持し続ける微生物の組合せを解析することで、自然界に存在し得る共生関係を大規模に同定することを目的としている。 本年度はまず、日本各地の土壌や、河川、海水環境中より24種類の環境微生物集団を採集し、これらを、全自動培養システムを用いて、様々な糖や有機酸、油など30種類の炭素源最少培地における継代培養実験(反復数4)を3か月間行った。また、得られた継代培養後の集団から3種類の代表的な環境を選別し、30種類の炭素源における継代培養後の定着集団に含まれている微生物の単離を行った。単離した800個以上のコロニーについて、16S rRNAの部分配列解析を行ったところ、289の細菌種を単離できたことを確認した。この中には16S rRNA配列のシーケンス領域における相同性が既知の近縁種と比較して95%以下のものが11種含まれており、これらの細菌は新種の可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大規模継代培養には、Beckman Coulter社製の自動分注機を活用し、様々な糖や有機酸、有機溶媒、油など30種類の物質を唯一の炭素源とするM9最少培地において振とう培養を25℃の条件下で行い、1週間に一度の植え継ぎ操作を12回行った。日本各地の土壌や、河川、海水からサンプリングされた合計24種類の微生物集団を、継代培養前の初期マイクロバイオームとした。各継代培養におけるBiological replicateを4とし、合計2880の独立培養系列を維持した。 本年度は、新型コロナウイルスによる影響により、メタ16S解析に必要な試薬の納品が大幅に遅れたため、継代培養前後でマイクロバイオームの構成がどのように変化したのか明らかにすることができなかった。しかしながら、当初計画ではメタ16S解析の後に行う予定であった、継代培養後の集団に含まれていた微生物種の単離・培養解析を前倒して行うことで、約300種の細菌種を単離することができた。細菌の単離には、継代培養に用いた炭素源を含む最少寒天培地を用いたが、単離したコロニーの中には同じ培地における2回目の純粋培養では生育しないものが複数見られた。この原因として、1回目の単離操作では、コロニーの周辺に他種のコロニーが存在するため、生育に必要な栄養素を利用できたからではないかと考え、純粋分離した他種の培養上清を含む培地や、継代培養後集団の培養液から作成した寒天培地を利用することで、最少培地では純粋培養できない種を培養することに成功した。このようにして単離された細菌種の中には、11種類の新種候補細菌が含まれており、継代培養を行うことで従来法では培養・単離を行うことが難しい種を単離できる可能性を示すことができたことから、研究はおおむね順調に進んだと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず、本年度に実施した大規模継代培養実験によって得られた継代培養後の微生物集団におけるメタ16S解析を実施する。メタ16S解析は、超並列シーケンサーであるIllumina Miseqを用いたアンプリコンシーケンス解析を行うことで、試料中に含まれていた微生物の種類をAmplicon sequence variant (ASV) として算出する。これにより、継代培養の前後でマイクロバイオームを構成する微生物種の変動を解析し、どのような環境においてどのような微生物が定着していたのか明らかにする。また、継代培養後の定着集団において、二種類以上の微生物が安定して共存していた場合はそれがどのような種の組合せなのか同定し、潜在的な共生パートナー候補としてリストを作成する。さらに、このような解析を複数の継代培養実験系列間において行い、その共通性や差異を解析する。複数の系列間において常に観察される組合せは、より密接な共生関係が築かれている可能性が高い。また、数多くの微生物種が同一環境中に安定に定着していた場合は、系列間の差異や異なる環境において生じる組合せを解析することで、そこに含まれている種が、他のどの種と一緒に存在しているのか絞り込んでいくことで共生パートナーの組合せを明らかにする。 また、本年度に継代培養後の集団から単離した細菌種を用いて、同一環境下から単離された細菌種同士を用いた共培養実験を行うことで純粋培養と比べて異種共存条件におけるそれぞれの炭素源における増殖能の変化を解析する。このような解析を行うことで、自然界に存在し得る様々な微生物種間の共生関係を明らかにする予定である。
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