2020 Fiscal Year Annual Research Report
w/oドロップレット培養法を用いた微生物バイオマス資化性微生物の獲得
Publicly Offered Research
Project Area | Post-Koch Ecology: The next-era microbial ecology that elucidates the super-terrestrial organism system |
Project/Area Number |
20H05593
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
野田 尚宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (70415727)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | w/oドロップレット / 微生物培養技術 / ハイスループット培養技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,water-in-oil (w/o)ドロップレットを用いたハイスループット培養技術を基盤として微生物バイオマスを主たる栄養源とした微生物培養方法の確立を目的とする。w/oドロップレットとは油相中に分散した微小水滴であり,マイクロ流路を用いることで一度に数十万個~数百万個単位で作製することができる。微生物バイオマスとは,ここでは微生物の生体成分そのものが潜在的に含有する有機・無機等の栄養成分を指すものとする。自然環境中の微生物は貧栄養状況下で生息していると考えられており,このような環境下では,ある微生物が死滅すると,他の微生物がその構成要素を栄養源として使用しているのではないかと仮説を立てた。以上を踏まえ,栄養源として微生物バイオマスを用いたw/oドロップレット培養技術を開発し,微生物バイオマスを資化する微生物の獲得を目指す。令和2年度では,まず栄養源として使用するための微生物バイオマスの調製を行い,その成分解析を実施した。さらに調製した微生物バイオマスを用いてw/oドロップレットの作製を行い,その安定性を評価した。今後の研究推進方策としては,土壌などの環境試料由来の微生物を対象として微生物バイオマスを栄養源とするw/oドロップレット培養を実施する。また,増殖できた微生物を回収し,そのシーケンス解析に基づいてどのような微生物が増殖したかを明らかにする。さらに新学術領域内での連携研究を精力的に進めた。具体的には計画班(A02-1 微生物相互作用が解き明かすポストコッホ微生物機能)内での連携として、w/oドロップレットを用いた微生物相互作用の解析技術について共同研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度においては,まずは微生物バイオマス調製の検討を行った。大腸菌を培養しながらODを測定して増殖曲線を描き,対数増殖期および定常期となる培養時間で菌体を回収した。回収した菌体に対して超音波破砕・オートクレーブ処理することで微生物バイオマスとしての候補溶液を調製した。超音波破砕後の菌体はアガープレート上でコロニーを形成したが,オートクレーブ処理後の菌体はコロニーを形成せず,死菌のみであることが確認された。そこで,オートクレーブ処理を行った菌体を微生物バイオマスとして,タンパク濃度や核酸濃度を定量した。さらに本微生物バイオマスを水相としてw/oドロップレットを作製したところ,直径30um程度および直径120um程度のドロップレットを作ることができた。作製したw/oドロップレットの安定性評価を行ったところ,直径30um程度のw/oドロップレットについては,1日静置後までは大きな変化はなかったが,1週間経過以降にサイズが不均一になった様子が観察された。直径120um程度のw/oドロップレットについて,微生物バイオマスを希釈せずに使用したドロップレットにおいては作製直後に均一サイズであったが,日数が経過すると次第にサイズが不均一になる様子が観察された。微生物バイオマス希釈液を使用して作製したドロップレットにおいては2週間静置後もサイズ・形状ともに作製直後から大きな変化はなく,均一に保たれていた。また、新学術計画班との連携を密接かつ精力的に進め、微生物相互作用が解き明かす微生物機能について、w/oドロップレットを用いた研究を進めた。以上より研究は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,微生物バイオマスを含むw/oドロップレットを用いた微生物培養技術の確立を目指す。これまでの結果から直径120umの微生物バイオマスを含むドロップレットが長期的に安定であることが確かめられたので,本ドロップレットに土壌等から採取した試料に含まれる複合微生物群を封入する。そしてドロップレットが安定的に保たれた状態のまま微生物を培養できるか,封入された微生物が増殖するのかを検証する。さらに,増殖した微生物を回収するためにRNase活性を指標とした微生物増殖ドロップレットの検出・分取手法であるFNAP-sortを実施する。FNAP-sortでは,蛍光RNAプローブを微生物バイオマスおよび環境試料由来の微生物とともにドロップレットに封入することで,環境試料由来の微生物の増殖に伴って放出されるRNaseが蛍光RNAプローブを切断して強い蛍光を発することを想定している。しかしながら,これまでの検討で調製した微生物バイオマスはオートクレーブ処理を行った菌体であるために,微生物バイオマス由来のRNaseを多く含む可能性が生じる。そこで,FNAP-sortの最適な条件の検討や,その他の微生物増殖ドロップレット検出方法の検討を行う必要もある可能性があると考えている。さらに、新学術領域の計画班(A02-1 微生物相互作用が解き明かすポストコッホ微生物機能)内での連携やそれ以外の領域内連携も含め、引き続き精力的に進める。
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