2009 Fiscal Year Annual Research Report
脳・言語共進化仮説に対するdifussion chainを用いた実証研究
Publicly Offered Research
Project Area | Experimental Social Sciences: Toward Experimentally-based New Social Sciences for the 21st Century |
Project/Area Number |
21012004
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山内 肇 The Institute of Physical and Chemical Research, 生物言語研究チーム, 研究員 (80467125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DILSHAT Abla , 生物言語研究チーム, 研究員 (00391847)
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Keywords | 言語進化 / 文化進化 / 心理実験 |
Research Abstract |
近年、言語の進化過程における文化進化、すなわち脳の遺伝的器質の進化に伴わない言語の複雑化の理論的重要性が理解されてきた。特にコンピュータ・シミュレーションによってヒトが元来持つ学習バイアスが、世代間の学習の連鎖によってその影響を強め合い、結果的に後世における言語知識の構造性に大きな影響を及ぼすことがわかっている。また、ここ数年、この知見を実際の人間を使った心理実験において検証しようとする試みが始まっている。本研究は、この心理実験をさらに推し進め、単なる学習の連鎖から、言語の本質的側面の一つで有るコミュニケーションの影響を探ろうというものである。 本年度においては、まず先行研究の追試実験を行った。具体的には、コンピュータモニタ上に現れる動きを伴った図形を観察し、その上で観察されたイベント(図形の性質+動き)に自由に名前をつけてもらい、それを次の被験者の学習入力(イベントとそれに対応する直前の被験者が作成した名前を学習してもらう)とし、さらにイベントから被験者自身の名前を生成してもらうというものである。実験の結果、先行研究同様、初期のランダムで全体論的な語彙生成から徐々、図形の性質に対応する部分と動きに対応する部分へと語彙が変化し、構成性の出現が観察された。 さらに、現段階において上記の実験を4人同時並行で行い、学習終了後に4人が同じ名前を観察し、それぞれどのようなイベントを選択するかを確認する実験を、2世代8人分について行った。この結果、予想通り、初期段階であるこれらの世代では、個々の被験者が作る文字列は極めて恣意的であり、結果的に他者とのコミュニケーションは上手くいかないことが確認された。
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