Research Abstract |
人間の高度かつ柔軟な知能に大きく頼る現在のIT社会は,情報爆発時代において深刻なデジタル・デバイドをもたらす恐れがある.これを避けるためには,人間のような柔軟な知能や人間の情報処理のモデルをもち,明示的に指示しなくても人間の情報処理を自然にサポートしてくれるようなシステムが求められる.本研究の目的は,言語に頼らず人間の意図を汲むことができる支援システムの実現に向けて,分散表現と自律ダイナミクスの利点を生かした人間の情報処理の計算モデルを構築することである.本年度の主な研究成果は以下の通りである. 1.選択的不感化ニューラルネット(SDNN)の関数近似能力の解析:やや複雑で部分的に不連続な2変数関数を用いた一連の数値実験を行った結果,SDNNは近似精度や汎化能力,学習速度や計算量などほとんどすべての点で,既存の関数近似器を凌駕することが示された.また,解析の結果,SDNNの高い関数近似能力には,分散表現と選択的不感化の両方が貢献していることなどがわかった. 2.表面筋電位信号からの動作意図推定:これまでの研究成果を基に,実際に不特定の使用者がすぐに使うことができるリアルタイム推定システムを構築した.また,デモ用に「じゃんけん対戦システム」を作成して成果報告会等で発表した.このシステムは,従来手法に比べて使用者の負担がはるかに少なく,調整などに要する時間も非常に短いため,さまざまな人支援技術へ応用が可能である. 3.人間-ロボット間インタラクションの実証実験環境の構築:した.また,ケア・レシーバー型ロボットとよぶ,子どもたちに世話をさせるタイプのロボットを開発し,こども英会話教室の協力を得て,実際の教育現場における子どもたちの各種行動を観察分析した.その結果,同ロボットは子どもたちの興味を喚起し,対話や行動を誘発することなどがわかった.
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