2009 Fiscal Year Annual Research Report
貧栄養海域の生物生産における島効果の再評価
Publicly Offered Research
Project Area | Linkages in biogeochemical cycles between surface ocean and lower atmosphere |
Project/Area Number |
21014006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古谷 研 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30143548)
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Keywords | 貧栄養海域 / 生物生産 / 島効果 / 窒素固定 / 栄養塩 |
Research Abstract |
本研究は、生物生産性の低い亜熱帯外洋域でも、島周辺では地形性の水柱擾乱や湧昇による下層からの栄養塩供給によって珪藻類の増殖で生物生産が高まる現象、「島効果」の再評価を目指すものであり、島周辺で窒素固定の増加の実態把握とそのメカニズム解明を目指している。今年度は「みらい」および「淡青丸」航海による観測を行った。2009年4~7月の「みらい」MR09-01航海ではペルー沿岸から南太平洋17°Sを西進し、ブリスベーンを経由して西部太平洋を北上し、nifH遺伝子の定量PCRにより窒素固定者の分布把握と^<15>N_2取り込み活性を中心に調べた。フィージー周辺で、いわゆるグループBに含まれる単細胞性シアノバクテリアとTrichodesmiumの現存量の高い海域が認められ、最大密度は前者が6,600コピー/L,後者が33,000コピー/L出現した。前者は島から離れた東方海域で、後者は島近くで最大密度を示し、両者の好適環境条件が異なることを示唆した。これに対してグループAタイプの窒素固定者は島周辺ではほとんど検出されず、現在、グループによる分布の違いの原因について解析を進めている。9月に実施が採択されていた淡青丸航海は、船内における新型インフルエンザの発生のため出港が大幅に遅れ、予定していた宮古島周辺で2日間弱の観測しかできなかった。しかし、濃密なTrichodesmiumの赤潮に宮古島近傍で遭遇した。この表層水塊には硝酸塩、壷硝酸塩、アンモニウム塩、リン酸塩、ケイ酸がナノモルレベルでほとんど存在せず、栄養塩枯渇状態から、赤潮の終期をとらえた可能性が示唆された。一方、航海中に低水温、高クロロフィル、高栄養塩水塊の、いわゆる湧昇と考えられる水塊が存在し、本研究が目指す島効果と古典的なそれとが不均一に分布している可能性が示唆された。
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Research Products
(7 results)