2009 Fiscal Year Annual Research Report
膜分子生成が誘発する奇妙なベシクルの形態変化
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of non-equilibrium soft matter physics: Structure and dynamics of mesoscopic systems |
Project/Area Number |
21015004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 健太郎 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 助教 (60512324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 正 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50124219)
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Keywords | ジャイアントベシクル / 自己生産ダイナミクス / 両親媒性分子 / 人工細胞モデル / DNA / メタボリズム / 情報複製 |
Research Abstract |
膜分子前駆体の添加に伴い、膜中や膜周辺での化学反応により、膜を形成する両親媒性分子が生成する分子機構を備えたジャイアントベシクルは、生成した膜分子の外膜のouter leafletへの溶解をトリガーとして様々なダイナミクスを発現する。特に我々は、細胞分裂に似た分裂ダイナミクスを示すべシクル系に注目して研究を行ってきた。本年度は、以下の二つの系について研究した。 膜内部での膜貫通型両親媒性分子T生成によって引き起こされるベシクル分裂ダイナミクスにおける、Tの役割を理解するために、ベシクル外部では水に不安定なTのかわりに、ほぼ同じ形状を持ち、化学的に安定なモデル分子TAZOを新規に合成し、種々の分子比率におけるベシクルサイズの変化について観測した。その結果、膜中で生成したTは、その生成量が少ないうちはベシクルを安定化し肥大化に寄与するが、ある程度の組成以上になるとむしろベシクルを不安定化し、ベシクル分裂を促進するという、二面的な役割を有していることを明確にした。 また、合成両親媒性分子とリン脂質からなるハイブリッドな自己生産ベシクル中で、ポリアニオンであるDNAをポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)により増幅させ、DNAの濃度による自己生産速度の変化について研究した。DNAをあまり含まないベシクルでは、前駆対添加から分裂までに数時間を要した。一方、内部でDNA濃度を増したベシクルにおいては、わずか十分程度で複数回の分裂が完了した。前駆体分子添加前の膜の表面電荷は中性となるように調整され、DNAとあまり相互作用出来ないが、DNAの内部濃度が高まると膜内部にあるDNAが膜と相互作用し、膜の変形方向を外方向に固定する。それと共に、外水相から添加された膜分子前駆体をゆるく補足し、加水分解による膜分子生成を起こりやすくする。そのことが、分裂速度を速める原因になっているものと考えられる。このような系は、生命進化を探る上でのモデルとしても興味深い。
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Research Products
(11 results)