2010 Fiscal Year Annual Research Report
ソフトマターを対象とした液体論的マルチスケール解析手法の開発とその応用
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of non-equilibrium soft matter physics: Structure and dynamics of mesoscopic systems |
Project/Area Number |
21015012
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
墨 智成 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40345955)
|
Keywords | 蛋白質 / 高圧変性 / マルチスケールシミュレーション / 圧縮率 / 疎水性相互作用 / 過冷却水 / 液-液相転移 / 水素結合ネットワーク |
Research Abstract |
本研究では,液体の密度汎関数理論(DFT)に基づくマルチスケールシミュレーション法の,高分子-水溶液系への適用において必要な自由エネルギー汎関数を開発と,1.蛋白質の高圧変性機構の解析,2.過冷却水中での液-液相転移近傍での疎水性高分子挙動の解析への応用を行った. 1.蛋白質の高圧変性機構 蛋白質の高圧変性は古くから知られているにも関わらず,その分子機構は現在も論争中の問題である.本研究では,水の水素結合ネットワークによる寄与を考慮した自由エネルギー汎関数に基づくマルチスケールシミュレーション法を水中での疎水性高分子鎖に適用し,圧力上昇に伴うunfolding転移および負の体積変化ΔVの再現に成功した.Unfoldingに伴うギブスの自由エネルギー変化ΔGの圧力依存性が非線形である事から,水和水の圧縮率変化が重要な役割を果たしている事を示した.さらに,ΔVの圧力依存性(ΔGの非線形性)は,unfoldingにおける露出用面積の増大に伴う周期が短く隙間の少ない高密度水和層の形成に帰着し,表面誘起の水素結合ネットワークの破壊に起因した水和特性である事を示した. 2.過冷却水中での液-液相転移近傍での疎水性水和物性 水の4℃での密度極大や温度低下に伴う疎水性物質の溶解度の増加等は,過冷却領域において存在する可能性が示唆されている水の液-液相転移による影響ではないかと指摘されている.そこで本研究では,水4000分子によるバルク水の分子動力学シミュレーションを実行し,過冷却水の液-液相転移の相図を完成させると共に,過冷却水中での疎水性高分子鎖のマルチスケールシミュレーションを実行し,その水和物性の解析を行った.高圧下での高密度液体(HDL)側への冷却では,顕著な変化は見られなかったが,低密度液体(LDL)側への冷却では,高分子鎖のunfolding転移が観測された.このLDL側でのunfolding転移は,高分子表面によって誘起される周期が長くて密度の高い安定なネットワークを有する低エントロピー水和殻の形成に起因する事が明らかと成った.
|
Research Products
(12 results)