Research Abstract |
カーボンブラックフィラーを分散させたポリブタジエンゴムを試料とし,二軸伸長装置を用いて,等二軸伸長,純ずり変形,一軸伸長変形下の応力緩和挙動を調べた.低温でも測定を行い,温度-時間換算則を用いて広い時間域で応力緩和曲線を得た.従来の関連研究とは異なり,本研究は応力そのものではなく,平衡応力を差し引いた緩和成分に着目してデータの整理を行った.各変形の全緩和強度で規格化された緩和成分の時間依存性曲線は,変形の種類,変形の程度にかかわらず,一本のマスター曲線となって重なることを見いだした.これは,緩和成分についてはひずみ効果と時間効果の分離性が成り立つことを意味する.従来,応力そのものに着目した解析がなされ,同分離則の成立について長く議論が続けられてきたが,本研究の成果はこの議論に終止符をうつものである.また,各変形の平衡応力で規格化された緩和強度が変形に依存しないことも見いだした.この結果の物理的理由については考察中であるが,ナノフィラー充填ゴムの非線形粘弾性緩和挙動の構成方程式の構築を容易にする発見である.同様の測定をフィラー量を変化させて行ったが,応力の時間依存性曲線はフィラー量に対してほとんど変化しなかった.また,興味深いことに,フィラーを充填していない純ゴムは,充填ゴムに比べて緩和強度は小さいものの,応力緩和成分の時間依存性は充填ゴムとほとんど同じであることがわかった.これは,フィラーが形成する網目状構造の崩壊が大きな緩和をもたらすものの,同過程は非常に短時間領域で起こり今回調べたタイムスケール(t>0.1s,25℃)ではダイナミクスに対して影響を与えておらず,ゴムマトリックスがダイナミクスを支配していることを意味している.
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